戦場で輝く王女は隣国の冷徹魔法騎士団長に溺愛される

ぜぶら。

第1話

 セラフィス王国、朝日が昇る頃。静寂を破るように街の鐘が鳴り響く。


王国の中心に位置する壮麗な城には、剣を手にした王女、セレスタ・ルクレシアが立っていた。彼女はこの国の美しさと豊かさを守るため、前線で数々の戦いを経験してきた。仲間たちを鼓舞し、厳しい戦況を乗り越えるその姿は、国民たちの心をつかんで離さなかった。



 そんなセレスタは王族でありながら、魔力を一切持たずに生まれた。魔法の発祥地として名高いセラフィス王国では、魔力は尊ばれる力であり、王族であればなおさらその存在価値が問われる。



幼い頃、他の貴族の子供たちが次々と魔法を操る中、ただ見ていることしかできなかった日々。肩身の狭い思いを抱えながら、彼女は次第に自分の無力さを呪い、心の中にあったわずかな希望の光がかき消されそうになっていた。



 しかし、初めて剣を手にした日、剣身から淡い光が揺らめき、まるで彼女の内なる決意に応えるかのように温かな輝きを放った。その光は魔力を持たないはずの彼女を、まるで魔法の加護が宿るかのように包み込んだ。剣が魔力の奔流をはじく様子を見た周囲の者たちは息を飲んだ。


 だが、いくら調査してもこの現象の理由は解明されなかった。魔法鑑定士は何度も彼女の力を探ろうと試みたが、セレスタ自身にはやはり一欠片の魔力も感じられなかったのだ。



誰もその光の謎を解けず、「奇跡の光」と呼ばれるに至ったが、セレスタにとってはその光こそが、自分がこの国に居場所を見つけた証だった。魔力は持たなくても剣で戦える――そう信じた日から、彼女は自らを鍛え続け、戦場では無類の強さを発揮するようになった。






 彼女は剣を見つめ、ゆっくりと手に力を込める。刃の先から淡い光が立ち昇り、城の朝焼けに溶け込むように輝いた。かつて自分を嘲笑した者たちを見返すためではなく、国を守るために振るう剣。光が彼女の信念を代弁するかのように、静かに揺らめく。



 

 

 ふと誰かの気配に振り向けば、側近であるオリバーがこちらに向かって走ってきていた。



「オリバー、どうしたの?」


「王女殿下、陛下がお呼びです。」


「陛下が?...すぐ行くわ。」






 部屋に行けば、すでに錚々たる顔ぶれが揃っていた。重々しい空気が漂い、皆が一様に真剣な表情をしている。



「ヴァルグリムの動きについて報告がある」父であるセリオス王が低い声で語りかける。













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