第46話「なんでアレックスまだいるの?な件」
「……ねぇ、そういえば、アレックスってなんでまだいるの?」
茜は、声だけの出演だったはずがなぜか隣でのほほんとしているアレックスに目を向けた。異世界に転生してからというもの、このイケメン(たまにヘタレ)はずっと一緒にいるけれど、今思い返してみると「一緒にいる理由」が特に明確じゃなかったことに気づいた。
「おい、アレックス、なんでまだここにいるの?」
茜が思い切って聞くと、アレックスはキョトンとした顔で首をかしげた。
「え、何言ってんの? 俺はずっとお前の仲間だろ? それに、この異世界のストーリー上、俺がいないとお前の冒険めっちゃしんどくなるんじゃない?」
アレックスは自信満々に答える。
「いや、でも最近の展開、全然お前関係なかったよね? 戦闘とか、なんならフェスで踊っただけじゃん」
茜は呆れたように指摘した。
「いやいや、そうは言っても俺、裏でいろいろやってんだって! 君が気づいてないだけでさ」
アレックスが誇らしげに胸を張ると、茜はさらに怪訝な顔をした。
「裏で? 何を?」
彼女が問い詰めると、アレックスは言葉に詰まる。
「あー、その…なんだ、その、ほら、冒険のために地図を調べたり…とか?」
彼は明らかに焦りながら言い訳をする。
「いや、そもそも私、最近あんまり冒険してないんだけど」
茜は冷静に指摘する。
「え、えーと、じゃあその、神様との対話のサポート?!」
アレックスはますます困った様子だ。
「神様の相手なら私一人で十分だし、むしろお前がいると話がややこしくなること多いんだけど」
茜は思い出したかのように苦笑いを浮かべた。
その時、突然神様が空中からふわっと現れた。今日はまたチャラい口調で登場だ。
「よっ! また仲良くやってるね~って、アレックス君まだいたの?」
神様が驚いたようにアレックスに視線を向けた。
「おいおい、神様まで俺を疑うのかよ!」
アレックスは不満そうに神様を睨んだ。
「いやいや、俺もお前の出番が薄くなってきたことは気づいてるんだよ。でも、まぁ、別にいいんじゃない? 茜ちゃんもアレックスがいないと寂しいんじゃないかって思ってさ」
神様は笑いながら肩をすくめた。
「寂しくないから!」
茜がすかさず否定する。
「ひどい!」
アレックスはまるで裏切られたような顔をして、頭を抱えた。
「でもさ、なんか違和感あるよね」
茜は首を傾げながら呟いた。「元の世界に戻りたいって思ってたのに、なんでアレックスは一緒に元に戻るって言い出さないのかな?」
「え? 俺、戻りたいって言ったことあったっけ?」
アレックスは困惑しながら尋ねる。
「え…一緒に戻らないの?」
茜の目がさらに鋭くなった。
「いや、俺はこの世界で結構満足してるんだよ。戦いもあるし、ダンスもできるし、フェスも楽しめたし。結構ここでの生活に馴染んでるんだよな」
アレックスは何とも言えない顔で言い訳を始めた。
「……嘘でしょ?」
茜はしばらく絶句していた。
その時、神様が声を出して笑い始めた。
「ははは、茜ちゃん、そこまで驚くことじゃないよ! アレックス君、ほら、異世界でけっこう楽しくやってるんだよ。まぁ、君の体が元に戻れない問題もあるし、ここで仲良くやるのも手じゃない?」
神様が軽く肩を叩いてきた。
「……もう、なんなんだよ、この展開」
茜は再び空を見上げてため息をついた。
+++++
次回予告:「アレックス、どんどん居場所がなくなってきた件」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます