第45話「作者も神様もとりあえずまともになった件」
「ほんとにさ、これでまともになるの?」
茜はどこか疑わしげに虚空を見上げていた。
「いやー、作者の約束だから、信じるしかないんじゃね?」
アレックスの声が虚空から響く。
「だってさ、神様がまともになるって言われても、そもそも最初からあの人、まともじゃなかったでしょ? ずっとズボラだったし、最近はチャラいしさ」
茜は腕を組んで唇を尖らせた。
その瞬間、空がパカっと割れて、例の神様がふわっと登場した。今回もチャラい登場…かと思いきや、ちょっとだけ真面目なオーラを纏っている。
「おっす! 元気にしてるか~…って、違う違う!」
神様が自分のチャラい口調に気づいて、慌てて咳払いをする。
「んんっ! 茜くん、アレックスくん、君たちの願いに応え、今日は神らしい神様に戻ってきたよ」
彼の声はいつになく威厳がある…ように思えた。少なくとも、さっきまでのチャラ神様とは違う。
「本当にまともになったの?」
茜は警戒しながら問いかけた。
「もちろんだとも! 私は全知全能の神であり、この異世界の運命を司る者…だが、それをちょっと前は忘れていたというわけだな。いやー、まぁ、疲れってやつかな?」
神様が照れくさそうに笑ったが、威厳を保とうと必死な様子だ。
「ねぇ、神様。これ、さっきの作者が仕込んだ茶番じゃないの?」
アレックスが疑いの目を向ける。
「いやいや、そんなことはない! これは本当に、私自身が君たちのために本気で変わろうとしているのだ。見たまえ、この神々しいオーラを!」
神様は手を広げて光を放つが、その後ろにはちらっと見えるポケットに入ったスマホ。
「おい、スマホいじってんじゃねぇか!」
茜が鋭くツッコむ。
「あ、バレた?」
神様はあっさりとスマホを取り出して、シュッとスライドしながら笑った。
「なんか違うんだよね、根本的に」
茜は呆れた顔でため息をついた。
「まぁ、いいや。で、私たち、もう元の世界に戻れるの? そろそろ、ほんとに帰りたいんだけど」
茜が少し真剣な顔で聞くと、神様は一瞬、考えるそぶりを見せた。
「ふむ…それについてはちょっと厄介な問題があってね」
「厄介って?」
アレックスが眉をひそめた。
「実は、君の元の体…もう燃えちゃったかも?」
神様は肩をすくめ、微妙な表情で言った。
「えっ!?」
茜は目を見開いて驚いた。
「だってさ、地球では火葬が普通だろ? 異世界に転生してからだいぶ経つし、君の元の体、多分もう灰になってるんじゃないかな~って」
神様は気まずそうに頭をかきながら説明する。
「ちょっと待ってよ! そんなの聞いてないよ! 私、もう戻れないの?」
茜は動揺しながら問い詰めた。
「まぁ、正直に言うと、戻れなくはないんだけどね。戻るときには別の方法が必要になるかも。なんか、別の体を用意しなきゃいけないとか?」
神様は少しあいまいに言った。
「なんだよそれ…なんでこんなに話がややこしくなってんの?」
茜はがっくりと肩を落とした。
「いやいや、大丈夫だって! なんだかんだで異世界生活も悪くなかっただろ?」
神様は軽く笑いながらフォローするが、茜は完全に不信感を抱いている。
「ほんとに大丈夫なのか…?」
茜はまだ疑いを捨てきれないまま、深くため息をついた。
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次回予告:「なんでアレックスまだいるの?な件」
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