第42話「玉を使ったら変な場所に飛ばされた件」
「ここ、どこ?」
茜は目を開けると、周りを見渡した。目の前には、今まで見たこともない風景が広がっていた。木々がカラフルすぎるし、空には虹色の雲が浮かんでいる。地面はふかふかの絨毯のようで、歩くたびにポヨンポヨンと弾む感触がする。
「ま、また変なところに飛ばされちゃった…」
茜はため息をついて、次に神様を一発殴ることを心に決めた。だが、その時、彼女の背後から勢いよく何かが飛びついてきた。
「クゥーン!」
「うわっ! 魔王(犬)!? あんたも一緒に飛ばされてきたの!?」
彼女の背中にしがみついているのは、いつもの魔王(犬)。どうやら彼も一緒にこの奇妙な世界に飛ばされてきたようだった。魔王(犬)はいつものように元気いっぱいで、茜の周りを飛び跳ねている。
「え、なんであんたまで来てんのよ…まぁ、いいか。ひとりじゃないし」
茜はちょっと安心しつつ、魔王(犬)の頭をポンポンと軽く撫でた。とはいえ、この場所がどこなのか、何をすべきなのか全く分からない。ふと、神様の顔が脳裏に浮かび、怒りがこみ上げてきた。
「ねぇ、これって絶対神様の仕業だよね?!」
茜は空に向かって叫んでみたが、返事はない。代わりに、遠くから奇妙な音が聞こえてきた。
「なんか…変な音しない?」
茜が耳をすますと、その音が近づいてきていることに気づいた。音の正体はすぐに分かった。遠くから見えるのは、大きな…ピンク色のカバ? しかも、楽しそうにスケートボードを乗り回している。
「なにこれ、どんな世界よ!? ピンクのカバがスケートボードに乗ってるとか、夢じゃないよね?」
彼女はその光景に完全に唖然とし、魔王(犬)も首を傾げていた。が、その瞬間、カバがスケボーを飛ばしながら彼女たちに向かって突進してきた。
「え、ちょ、ちょっと待って!?」
茜は慌てて横に飛び退くが、魔王(犬)はその場に座り込んでカバをじっと見つめていた。カバはスピードを緩めることなく、一直線に魔王(犬)に向かって滑ってくる。
「魔王(犬)、どいて!」
茜が叫んだ瞬間、魔王(犬)は飛び上がり、ギリギリでカバをかわす。しかし、その拍子にカバはスケボーから転げ落ち、地面に派手に激突した。
「痛った! な、何すんだよ!」
カバが人間のように文句を言いながら立ち上がった。茜はさらに驚きの声を上げた。
「喋った!?」
「当たり前だろ! ここはそういう場所なんだよ!」
カバはプンプンと怒りながらスケボーを拾い上げた。茜はしばらくそのカバとスケボーの取り合わせに唖然としていたが、これ以上驚いても仕方がないと思い直した。
「…もう、何でもアリだな、この世界」
彼女は深いため息をついて、魔王(犬)を撫でながら前方を見据えた。こんな奇妙な世界に飛ばされても、彼女はまだ諦めるわけにはいかない。
「とりあえず、ここから脱出しなきゃ。でも、どうするのよ…?」
魔王(犬)はクゥーンと声を上げ、何かを見つけたように前方を指さすように歩き出した。彼が見つめる先には、遠くに奇妙な建物が見えた。建物の上には、大きな看板に「EXIT」と書かれている。
「出口!? 本当にあるの!?」
茜は目を輝かせ、魔王(犬)と一緒にその建物に向かって走り出した。だが、そこにたどり着くまで、また一波乱ある予感がしてならなかった。
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次回予告:「出口を目指したらさらにカオスな場所に辿り着いた件」
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