第27話「フェスが完全にカオスな件」
「さて、フェスの時間だ!」
神様が突然宣言した。そう、前回の魔王騒動もあって忘れかけていたが、茜とアレックスは異世界で開催されるという超盛大なフェスティバルに来ていたのだった。魔王の登場やら鏡の大暴走やらで、完全に忘れていたが、ついにそのフェスが始まるのだ。
「って、あの魔王どうするの? フェスとかのんきにやってる場合じゃなくない?」
茜は魔王の存在を指摘するが、魔王はまだ可愛い姿のままで、その場に座り込んで何やら考え込んでいる。
「魔王? ああ、大丈夫、大丈夫。あの姿じゃ誰も彼が魔王だとは思わないから」
神様は笑いながら手をひらひらと振っている。どうやら、フェスを優先するつもりらしい。
「いやいや、そんなのんびりしてていいわけ……」
茜が反論しようとした瞬間、突然耳をつんざくような音楽が流れ始めた。巨大なスピーカーから放たれる爆音に、茜もアレックスも思わず耳を塞ぐ。
「ようこそ皆さん! 異世界フェスへ!」
巨大なステージに立つのは、なんと神様自身だった。キラキラと輝く派手な衣装を着て、マイクを握るその姿はまるでトップアイドルのようだ。しかも、バックダンサーには異世界のモンスターたちが並び、踊り始めている。
「ええええっ!? 神様が主催なの!?」
茜は驚愕しながら、まさかの展開に目を疑った。こんなカオスなフェスを主催しているのが神様だとは思ってもみなかった。
「もちろんさ! 俺はただの神様じゃなくて、異世界のエンターテイナーだからね」
神様はニヤリと笑い、ステージの上でクルリと回転した。すると、会場中にカラフルな光が飛び交い、ますます雰囲気がハイになっていく。
「おい、どうするんだよこれ……」
アレックスが呆れた様子で茜に声をかける。どうやら彼も、この状況に対応する方法がまったくわからないらしい。
「うーん……もう流れに身を任せるしかないんじゃない?」
茜も完全に諦めムードだ。とりあえず、フェスが終わるまで大人しくしておくのが一番の選択肢かもしれない。
しかし、そんなことを考えている間に、ステージでは次々と「異世界らしい」出し物が繰り広げられていた。ドラゴンのファイヤーパフォーマンスや、魔法使いによるライトショー。さらには、スライムのダンスバトルまで!
「これ、なんのフェスなの?」
茜はもう頭が混乱していた。ファンタジー的な要素がてんこ盛りで、何がメインのイベントなのかさえわからない。隣を見ると、アレックスも同じように困惑している。
「そして、いよいよ本日のメインイベント!」
神様が高らかに叫ぶと、観客たちは一気にざわめき始めた。どうやら、これから何かとんでもないことが起こるらしい。
「メインイベントって……何?」
茜が神様を見上げると、彼はニヤリと笑ってマイクを掲げた。
「異世界の王者を決める、全力バトル大会だ!」
「えええええっ!? バトル!? なんでフェスで戦わなきゃいけないの!?」
茜は大慌てで叫んだ。普通、フェスって音楽やダンスを楽しむものじゃなかったのか? なぜバトルが急に始まるのか、理解できない。
「しかも、お前たちも参加だぞ!」
「なんでだよ!」
アレックスも茜に負けじとツッコむが、神様は無視して次々と参加者の名前を読み上げていく。どうやら、逃れることはできないらしい。
「……こうなったらやるしかないか」
茜は覚悟を決め、神様から渡された武器を手に取る。それは「理想の自分」が使うべき、ピンク色のハンマーだった。どう見てもおもちゃにしか見えないが、これで戦えというのだろうか。
「俺の理想、こんなムキムキの肉体なのに、武器はこの剣かよ……」
一方のアレックスは、超巨大な剣を渡されていた。確かに筋肉モリモリの彼には合っているが、現実の彼には到底扱えそうにない大きさだ。
「じゃあ、全員準備はいいか? バトルスタート!」
神様の合図とともに、フェスの会場は一気にバトルフィールドへと様変わりした。歓声が飛び交い、観客たちは興奮に満ちている。
茜はピンクのハンマーを構え、相手を探すが……どこを見ても、まともな相手はいない。モンスターや異世界の戦士たちが次々と戦い始めており、その中に魔王の姿もあった。
「おい、魔王! こんなところで何してるのよ!」
「ふはは、我がこの可愛い姿で王者になるのだ!」
魔王は変わらずアイドル的な姿のまま、しかし意気揚々と戦いに挑もうとしていた。完全に場違いだが、彼なりに楽しんでいるようだった。
「もうどうでもいい……」
茜はため息をつきながら、目の前に迫ってくるスライムをハンマーで叩き潰す。まさかフェスでこんなカオスなバトルをする羽目になるとは思わなかったが、ここまで来たら流れに任せるしかない。
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次回予告:「バトルが予想外の展開になった件」
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