第23話「神様の玉が壊れた後、まさかの展開だった件」
「まさか、こんなところに戻ってくるとはね」
茜は不機嫌そうにアレックスにぼやいた。あれだけ大騒ぎして、結局元の世界に戻ってきた二人。街も無傷、騒動もなし。まるで何もなかったかのように静かだった。
「まぁ、楽しかったんじゃないか?」
アレックスは呑気に笑いながら、またいつものように不思議な動物たちにちょっかいを出していた。茜は、そんな彼にイラっとしつつも、ふと気づく。
「……あれ、玉、どうなったんだっけ?」
あの瞬間、玉が光りながら消えてしまったことを思い出した。あれほど万能に見えた神様の玉が、まさかこんな形で役に立たなくなるとは。
「そういえば、神様、もっといいアイテムくれるとか言ってたよね」
「ん? ああ、確かにそんなこと言ってたな」
アレックスが適当に返事をすると、どこからともなくバッと白い光が閃いた。そして、その光の中からズボラ……いや、妙に疲れた感じの神様が現れた。
「おーい、茜! 予想以上に使いすぎたなぁ」
「神様……! もっといいアイテムって話、まだ有効ですか?」
茜は神様に詰め寄った。玉の失敗を踏まえて、次はもっと慎重に使えるアイテムを望んでいたのだ。しかし、神様は目をこすりながら、あくびを一つ。
「うーん……あんまりねえんだよなぁ。いや、あるにはあるけど、ちょっと面倒なんだよね」
「えっ? 面倒って……!?」
「まぁまぁ、焦らない焦らない。とりあえず、これでも使っとけ」
神様は適当にポケットから何かを取り出し、茜に投げつけた。それは……なんと、リモコンのようなものだった。
「リモコン? これで何ができるの?」
茜は疑いの目でリモコンを見つめる。神様が投げつけてきたそれは、どう見ても普通のテレビのリモコンだった。ボタンもやけに多いし、カラフルで安っぽい。
「これはなぁ、時間を巻き戻したり、早送りしたり、色々できる便利アイテムなんだ。使い方は……まぁ、適当にやればわかるだろ」
神様はあまりにも適当な説明をして、また光の中に消えていった。茜はリモコンを手に取り、どんな機能があるのか確認してみる。
「時間巻き戻し? 早送り? ちょっと、そんなの危険じゃないの……?」
「おもしろそうじゃないか! さっそく試してみようぜ!」
アレックスは無邪気にリモコンを奪い、早速「早送り」のボタンを押した。
その瞬間、周囲が急速に動き始めた。通り過ぎる人々、流れる雲、鳴き声をあげる動物たちが全て早送りされたかのように、ものすごいスピードで動いている。
「わわっ! ちょっと、これどうやって止めるの!?」
茜が慌ててリモコンを奪い返そうとするが、アレックスは楽しげに笑いながら逃げ回る。二人はリモコンを巡ってドタバタと走り回り、街中の人々に変な目で見られた。
「早送りしっぱなしじゃ大変だよ! 止めてよ!」
「ははは! おいおい、もう少し楽しもうぜ!」
アレックスの無責任さに、茜はついにブチ切れ、全力で彼に飛びかかった。アレックスはバランスを崩し、二人とも地面に転がり込む。
そして、偶然にもリモコンの「停止」ボタンが押された。
世界は再び静かになった。何事もなかったかのように元の速度に戻ったが、茜とアレックスは地面に転がったまま、しばしの間動けなかった。
「これ、危ないよね……」
茜はリモコンを握りしめながら呟いた。神様が適当に渡してきたアイテムは、やっぱりどこか怪しい。リモコンで時間をいじるなんて、どう考えてもトラブルの元だ。
「でも、今度こそ何か使えるかもしれないな! これで問題解決も早くできるぞ!」
アレックスはポジティブすぎる。茜はため息をつきながらリモコンを見つめ、次の使用を慎重に考えなければならないと心に誓った。
+++++
次回予告:「リモコンを使いすぎたら大変なことになった件」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます