第15話「勇者、秘密結社でまさかのドキドキだった件」


「次の任務はこれだ」


 いつものように、王様から渡されたリストには「秘密結社への潜入」と書かれていた。茜とアレックスは、またもや何か厄介な仕事が舞い込んできた予感を感じた。


「秘密結社って、なんか怪しい感じだよな。何してるところなんだ?」


「どうせまた、バイト感覚の任務なんでしょ。勇者が潜入する意味あるのかな?」


 茜は半ば諦めながらも、任務を受け入れざるを得なかった。だが、今回は少しだけ面白そうな匂いもする。秘密結社という響きには、どこかロマンを感じる部分もあったからだ。


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 二人がたどり着いたのは、夜の森にひっそりと建つ古びた館。入口には怪しげなガードが立っていて、どう見ても「怪しい集会」感が漂っている。


「ここが秘密結社の本拠地……って、雰囲気からして完全に怪しいよね」


「でもさ、これぞ冒険の匂いじゃないか! 潜入任務なんて、まさにスパイみたいでカッコいいだろ!」


 アレックスはすっかり舞い上がっているが、茜は警戒心を解かずに中へ入った。


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 中に入ると、予想に反して内部は豪華な装飾で彩られていた。赤いカーペットに、大理石の柱、壁には美しい絵画が飾られており、まるで貴族の邸宅のようだった。


「なんだここ……秘密結社っていうか、リッチな集まりじゃん」


「いやいや、これは何か裏があるに違いない。油断するなよ、茜!」


 二人は慎重に館内を進んでいく。そこへ突然、彼らの前に現れたのは、露出度の高いドレスを身にまとった妖艶な女性たちだった。


「ようこそ、勇者様。お待ちしておりましたわ」


 そのうちの一人が、甘い声で二人に近づいてくる。彼女の大きな瞳と、誘うような笑みが何とも言えない雰囲気を醸し出していた。アレックスは明らかに動揺している。


「え、えっと……どうも?」


 茜はその様子を見て呆れながらも、自分自身も少し気まずさを感じていた。この館は明らかに普通の場所ではない。何かしらの罠が仕掛けられているに違いない。


「今日は特別な歓迎をさせていただきますわ。勇者様、どうぞこちらへ」


 女性たちは二人をさらに奥の部屋へと案内した。そこには、大きなベッドが中央に置かれ、ロマンティックなキャンドルの光が揺れている。茜は一瞬、息を呑んだ。


「ちょ、ちょっと待って! これって、どういう状況!?」


「お楽しみの時間よ。勇者様には特別なサービスをご用意しているの」


 妖艶な笑みを浮かべた女性たちが、アレックスに近づく。彼は完全に顔を真っ赤にして後ずさりしていた。


「いや、ちょっと待って! これは、そんな……えっと、任務の一環じゃないよね!? これ絶対違うよね!?」


 茜も焦りを感じつつ、周囲を見渡す。明らかにこの状況は何かおかしい。任務のはずが、なぜこんな誘惑じみた展開になっているのか理解不能だった。


「アレックス! 早く出ようよ! 絶対これ、罠だって!」


「そうだな! 出よう、今すぐ!」


 二人は急いで部屋から飛び出そうとするが、女性たちが再び道を塞いだ。


「お急ぎにならないで。せっかくの夜ですもの、楽しんでいってくださいな」


 彼女たちはさらに距離を詰め、茜とアレックスに迫ってくる。茜は内心焦りつつも、なんとか状況を打破しなければならないと思った。


「ええい、こうなったらやるしかない!」


 茜は思い切って近くにあった花瓶を手に取り、振り回した。


「やめろってばー!」


 アレックスはホウキに乗ったときのように顔を真っ赤にして叫んだが、茜の一撃が見事に決まり、女性たちはひるんだ。


「今だ、逃げるぞ!」


 二人は一気にその場を脱出し、館を飛び出した。外に出ると、夜風が心地よく肌に触れ、二人はやっとほっと息をついた。


 +++++


「なんだったんだよ、あれ……秘密結社ってもっとこう、陰謀とか怪しい実験とかそういうのかと思ったのに!」


「ほんと、予想外すぎるわ。もうなんか疲れた……」


 茜はがっくりと肩を落としながら、再び王様の元へ報告に向かうことを決めた。


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 次回予告:「福引きで世界を救うなんてそんなことありえない件」

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