第50話 リヴァイアサン
「う、うええええん!! 痛いのだ!! な、殴らないで欲しいのだ!!」
水色のドラゴン……改め、リヴァイアサンはエリカさんの攻撃を受けて泣いていた。
俺達は思わず、あっけにとられる。
「リヴァイアサンって喋るんですね……」
「そんな訳ないじゃないですか……」
エリカさんが首を横に振る。
「一応、子供に読み聞かせるようなおとぎ話には人の言葉を話すドラゴンとかいましたけれど。基本的にドラゴンは厄災ですよ。いるだけで村にとっては危機なんですから。たまに本当に大人しいドラゴンとかいますけど」
「エルフの村でもそうっすよ! 良い子にしないとドラゴンに
「ギルドとしても基本的にドラゴンA級以上の討伐対象になりますし、危険なことには変わりないですね」
「ま、待ってほしいのだ!! ボクはそんな危ないことはしないのだ!!」
リヴァイアサンは長い首をブンブンと振る。
この湖の大きさも想像以上に深いのかもしれない。
リヴァイアサンの体長は20メートルくらいありそうだった。
ここまでの大きさだと、リヴァイアサンが自由に泳げる大きさを予測すると、予想のつかない深さになるはずだ。
「ううっ……美味しそうなマナだと思って、ワクワクしてきたらとんだ災難なのだ!!」
リヴァイアサンは目に大粒の涙を浮かべる。
そもそもがデカいから、より大きく見える。
「ところで……名前はあるのかな?」
「ボクの名前か? ボクは『レヴィ』って言うのだ!!」
そういえば、リヴァイアサンって別名はレヴィアタンだったよな。
だとしたら、そのままネーミング多くないか?
「わふっ!」
いや、シロに白いからって理由でシロって名前を付けた俺が言えることではないか。
「ふーん。ところで、レヴィっていつから喋れるようになったの?」
エリカさんはリヴァイアサン……改めて、レヴィに尋ねる。
「分からないのだ。気が付いたら、喋れるようになっていたのだ」
そうか……本人が分からないなら仕方ないか。
「本当に?」
「本当なのだ!! 嘘なんて吐いてもしょうがないのだ!! だから殴らないでほしいのだ!!」
懇願するレヴィ。
「とはいえ、前例がないんですよね」
エリカさんは別にレヴィが嘘を吐いているとは思っていなそうだ。
「そうですか……」
考えられるとしたら……山小屋の影響の可能性か。
何故か周辺に強い生物もまったく見掛けず、畑で育て入る作物がこの世界の基準で比べると、明らかに育ちが良すぎる。
そのことは、ギルド長のステラさんも納得している。
山小屋付近の領域にしか影響がないものだと勝手に思っていたけれど、ひょっとしたら、多少の誤差はあるかもしれない。
「そこの人間達はいつも一緒なのか?」
「そうですよ? まぁ、私達はいつも一緒ですよね?」
「そうっす!! ユキトさんの家は楽しいっすからね!!」
「私もユキトさんの御宅で楽にギルドの仕事をさせて頂いております」
「楽しそうなのだ……」
レヴィは羨まそうに俺達を見る。
「実際、ユキトさんのおかげで楽しく暮らせてますよ」
エリカさんにそう言ってもらえると嬉しい。
だって、俺もみんなのおかげで今を満喫して過ごせている。
本当にありがたい限りだ。
「お前、ユキトっていうのか。なぁユキト。正直、狭いし飽き飽きしていたのだ。ボクも行っていい??」
「いやぁ……その姿だとさすがに家に入れないかな……」
一緒につれて行ってあげたいけれど、まずその大きさだと家に入れない。
入れたとしても過ごせる場所がない。作ればいいかもしれないけれど、ただの大きな水たまりを作るのが精いっぱいいで数日も立たずに水が汚れてしまうだろうから。
「安心するのだ! ボクは偉いので人間の姿になるのも簡単なのだ!! 刮目するのだ!!」
そう言って、レヴィは自身の真下に水色の魔法陣を展開する。
レヴィ魔法陣は徐々に縮小する。縮小に合わせてレヴィの姿も小さくなる。
その後、魔法陣の光に包まれた後、人の姿になった。
「上手くできたのだ!!」
レヴィは水色の髪をした小さな女の子になった。背はユイちゃんと同じくらいで顔立ちはとても整っている。
頭にはリヴァイアサンの時に生えていた名残の小さな角がある。
なんというか……異世界って感じだ。
「ごめん。とりあえずこれを羽織ってくれないか」
ただ問題は全裸なのだ。
俺はリュックから予備で持っていた上着を取り出し、レヴィに手渡した。
「別にボクは気にしないのだ!」
「俺が気にするんだ」
「そうなのか? ありがたく借りるのだ!」
レヴィは上着を受け取ると、そのまま羽織った。
なんか……ルナちゃんに初めて会った時にことを思い出すな。
今はちゃんと服を着てくれるからいいけども。
「いや……リヴァイアサンが人になるのはさすがにおとぎ話でもないんですけど」
「そうですね……私はリヴァイアサンどころかモンスターが人になるって事例は聞いたことないですね……」
「ユキトさんの近くにいると面白いっすね!!」
三者三様の反応。レヴィが喋るのはかなり異例のことなのだろう。
「こ、これならボクもついて行ってもいいのだ?」
レヴィは少し不安そうな眼差しで見つめてくる。
たしかに、一人は寂しい。
俺が孤独じゃなかったのは、運が良かったから。
もしも、自我が芽生えた時に孤独だったなら。
きっと俺は耐えられないだろう。
「あんまり期待しないでくれるなら」
「わーい!! 嬉しいのだ!! ありがとうなのだ!!」
レヴィはすごく喜んだ。
「それじゃあ……一度戻りますか」
そうして、俺達はレヴィを連れて
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最新話までご覧頂きありがとうございます!!
皆様に応援頂き、なんと『書籍化』の企画が進行することになりました!!
本当に読者の皆様の応援のおかげです! ありがとうございます!!
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今後とも変わらぬ応援頂けたら幸いです!!
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