真嶋若頭邸の居候

真島本家への訪問

第1話

5月の晴れた日の午後



俺はバイクを飛ばして『関東龍聖会かんとうりゅうせいかい真嶋組まじまぐみ本家』の駐車場にいた。

傍らには同じくバイクに乗った林隆正はやしたかまさ


「…緊張しますね。」

「まあな。」


林は俺より少し背が高く首も太い。がっしりした体型は元ラガーマン。

怪我でラグビーが出来なくなって、ぐれてる時俺に絡んで殴られて…いつの間にか懐かれて舎弟を名乗ってる。

本当は高校の二年先輩だが俺に敬語を使うのはそれ故だ。

将来はヤクザになって俺を支えてくれる気らしい。モノ好きな奴。


あ?俺か。

俺は湯島英斗ゆしまえいと

今は叔母である真嶋亜依まじまあいの嫁ぎ先である真嶋組の若頭邸で世話になってる身だ。いわゆる居候。

実家は真嶋と肩を並べる同じ関東龍聖会湯島ゆしま組。将来は長男の俺が代紋を背負うつもりだ。なのに何で親戚筋の組に居候してるかと言えば…まあ、人生色々ある。なんてな。

今日は居候先の亜依ちゃんの乗る車を若頭邸から本家までバイクで先導して来たんだ。

メットを脱ぎ金髪頭をひと振りしてると


「エイ~!」


少しハスキーな声で俺を呼ぶのは


「亜依ちゃん!だから英斗だっつーの!」


今、話に出た俺の3つ上の叔母の真嶋亜依。護衛してた車から降りて俺に手を振ってる。


「可愛いっすね。」


「だな。秀一郎さんの前で言うなよ。」


一応林には警告する。


「わかってます。今まで散々睨まれましたから。」


秀一郎さんとは真嶋秀一郎まじましゅういちろう。亜依ちゃんよりひとつ上の真嶋組若頭まじまぐみわかがしら

イケメン、長身、文武両道、侍みたいな凛とした澄んだ気を纏う男。彼の唯一の弱点が新婚の奥さんの亜依ちゃん。

口は悪いがさらさらストレートの黒髪、綺麗な顔は笑うとめちゃくちゃ可愛くなる。性格も作る料理も極上だ。誉めすぎだって?当たり前だ。何しろここだけの話。

亜依ちゃんは俺の初恋の人だから。

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