第22話 『好きだよ。ずっと』
神社の境内に呼び出された美緒……。
境内には、朝陽と想汰君が待っていた。
「朝陽、急にどうしたの?」
美緒が朝陽に尋ねた。
朝陽は、隣にいる想汰君の顔を見た。
それに気づいた想汰君は、無言で
境内の中にあるご神体の木の裏側に歩いて行った。
二人きりになった朝陽と美緒。
朝陽は、美緒の頭に手を置くと優しく囁いた。
「美緒……」
朝陽の言葉に美緒も、
「朝陽? どうしたの?」と尋ねる。
「俺……多分、もうすぐ、消えると思う。
また、美緒の前からいなくなる……」
「また、いなくなるの? もう会えないの?」
と不安そうな顔をする美緒。
「『花火大会』それまでは、大丈夫だよ」
微笑む朝陽。
「どうしてわかるの?」
「頼んだんだよ。俺を連れに来た男に……。
『花火大会』は、美緒やみんなと一緒に
行きたいって。
そしたら、そのくらいはいいって
言われてさ。だから、『花火大会』までは、
美緒の前からいなくならない。
だから、それまでに美緒に色んなこと
伝えたくて……。
想汰君にも協力してもらったの」
「そう……。やっぱり、朝陽は消えちゃうんだ」
と悲しそうな顔をする美緒。
「仕方ないよ。俺は、もともと、
この世にはいないんだし……。
こうして、皆の前に現れたのも、美緒と話せたり
触れられたりするのは、
色んなことが重なって、
軌跡的なんだから……。だから、美緒、
その日が来て、俺が突然消えても
悔いが残らないように
お互いに伝えたいことは伝え合っておこう」
「うん……わかった。
朝陽 好きだよ……これからもずっと」
と美緒が言った。
「あ~美緒、ずるい。
それは、男の俺が言う言葉なのに……」
口を尖らす朝陽。
「ふふふ……いいじゃん」
「うん。ありがとう……。
美緒、俺も好きだ。美緒のことが大好きだ。
やっぱり、消えるなんて嫌だな。
時間が止まればいいのにな……」と呟く朝陽。
朝陽は、両手を広げると美緒を自分の腕の中に
招き入れ、おもいっきり彼女を抱きしめた。
「朝陽……痛いよ」と呟く美緒。
目を閉じ、無言で美緒を抱きしめる朝陽。
二人は互いを見つめると、軽く唇を重ねた。
ザワザワザワ……
と境内に風が吹き抜けた。
ご神体の枝葉も吹き抜けた風に揺れる。
頬に風を感じた二人は空を見上げた。
ご神体の裏側にいた想汰君のもとに
朝陽がやって来ると、
「想汰、ありがとうな」と呟いた。
「朝陽さん、もう用は済んだの?」
と朝陽に聞く想汰君。
「ああ。想汰、おまえもそろそろ塾の時間だろ?
遅れないように気をつけて行けよ」
と想汰君の頭を撫でる朝陽。
「うん。じゃあ、行くね」
と想汰君が答える。
朝陽と美緒の前を歩いて行く想汰君……。
見つめ合う想汰と美緒。
想太君が境内を出て行く頃になると、
朝陽は美緒の前から
姿を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます