あっぱれ!マルスケくん
塩だれ鳥レバ400円
オープニング:訪問者
6月下旬。六甲山内の某別荘にて
夜21:00頃
六甲山の奥にひっそり寂しくと佇む別荘地帯5軒ほどの住宅が集まっているが、恐ろしいほどに人気を感じない。
それもそのはず、ここ一体の建築物や施設は全てが廃墟。金持ちの休暇を利用して稼ごうと作られた立派なゴルフ場もそれらの一つで、数年整備されていないせいで、荒れ放題である。
誰からも忘れ去られ、見向きもされなくなったはずの元豪華別荘地。
しかし、その隅にあるコテージのような木造住宅には、1人の少年がいた。
灯りは付けてはおらず、ダイニングに座り夜空を眺めている。左手にはミネラルウォーターが入れられた大きなタンブラー、右手にはオレンジ色の錠剤ボトル。
少年の名前は、内海聖也。
彼は今、自殺しようとしている。
内海「ケッ。死のうと決めた日のくせに、やたら夜空が綺麗ときたか。」
夜空を眺めながら、そう呟く。
内海「俺の人生も、つい最近まではあんな風にキラキラしてたのにな。たった一つの事故でこの有様、何もかも失っちまった」
普段は独り言など決して話さない。しかし、今は何故かペラペラと言葉が出てきてしまう。話す人間も話せる人間も、身の回りには居ないというのに...。
内海「天罰が降ったのかもな。絶対に人に恨まれてないと言い切れないし。自分では一生懸命頑張ったつもりでも、他人から見ればただの金持ち息子。気づかなかっただけで、散々甘やかされて生きてきたのかもしれない...。だから、あんな詐欺に引っかかったんだ」
ボトルを握っていた右手の力が、湧き上がる怒りで徐々に強くなっていく。しかし、すぐに正気に帰り、ため息をつくと、ボトルを見つめた
内海「まぁそんなヘタレの世間知らずに生きてる場所はここにはない。さっさと死のう」
内藤はゆっくり、白いボトルキャップを開けた。中には大量のカプセル錠剤が入っている。これを一気に飲み込めば、確実に人生を終わらせられる。
内海「苦しいか否かは分からねぇ。だけど、このままクソに成り下がっていく人生よりマシだ!!」
左手に持ったミネラルウォーターを一気に飲み干し、錠剤のボトルを顔に近づける
内海「父さん!母さん!今そっちに行くからなぁ!!」
一度に飲み干そうと、ボトルの口に下唇をつけて、一気に顔を上に傾けた...。
しかし、その瞬間
ドーーーーーン
突然、耳に突き刺さるような爆音と大きな揺れが内海を襲った。
衝撃で椅子が倒れて、錠剤が床に散らばる。それと同時に、1ヶ月間掃除しなかった大量の埃が煙のように舞い上がった。
内海「え!?な、何?今何が起こった!?マジで何が起こった!?」
顔をハイスピードで左右させ、部屋を見渡す。
すると、先ほどまで夜空と自分の間にいた大きな窓があった位置に、奇妙な物体があるのを発見した。
内藤が急いで裏のキッチンに周り、非常用の懐中電灯で物体を照らした。煙に覆われて詳しく見えないが、形状は半径1mほどの球体であることが分かった。
内海「割れたガラスの形と床の傷...、多分空から降りてきたものだ...。これは、隕石か...?」
恐る恐る、物体に近づく。煙が徐々に晴れ、それは正体を表す。表面は自然由来ではなく、何かしらの金属が加工されて形成されたもの。そして真ん中には、大きな丸型のガラス窓のようなもの...。
内海「これって....まさか、宇宙船!?」
大きな傷がないものの、数箇所に黒ずんだ焼かれたような跡がある。
内海は恐る恐る、ガラス窓の中から様子を伺おうと近づいた。
宇宙船の様なものの中身は、白い煙に覆われていてよく見えない。もっとよく見ようと近づこうとした瞬間、突然ゆっくりではあるものの、大きな窓が開く。空いた箇所から順番に勢いよく煙を吹き出しながら。
プシュ〜〜〜
内海「ギャァァァァァァァ!!」
尻餅をついて、後退りする。
窓が完全に開ききり、中の様子が見える様になる。
その中は、王道SF映画でよく見る、テンプレなコックピットだった。そして操縦席に居たのは、明らかに地球の生命体と思えないモノだった。
肌の色は紫色。複数の箇所が破れた、上下が繋がっている白色のツナギらしきものを着ている。デザインは宇宙服の様な見た目だが、生地に厚みはあまり無い。
体の構造は人間に似ている。ただ、全体的に丸みを帯びている。特に顔は、完全に近い程の球体。縦に細長い目、角がない鼻。
表情筋があるらしい。証拠に今、とても気まずそうな顔をしている。
宇宙人「あの〜夜分遅く失礼します。ここは地球でしょうか〜」
内海「・・・・・・・・・・」
宇宙人「・・・・・・・・・」
内海「ギャァァァァァァァ、紫色のタヌキが喋ったぁぁぁぁぁ」
宇宙人「俺はタヌキじゃねぇぇぇぇぇぇ」
あっぱれ!マルスケくん 塩だれ鳥レバ400円 @kakaka567
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