後輩との通話

後輩との通話

 お久しぶりです!センパイ! どうしたんすか、朝から急に――いや、オレなら大丈夫っすけど。朝の部活は自主練なんで、サボりでも。

 

 ――オレですか? 元気ですよ。もうすぐ受験なんで、そこはブルーっすけど。……そう、志望校、渡会センパイの行ってた高校なんです。うちの中学、剣道部ないじゃないですか。高校では部活でやりたくて。

 模試の判定ギリだったんで、もう今から心臓バクバクですよ。


 道場のみんなも会いたがってますよ。正月とか、良かったら帰ってきてくださいね! 初詣行きましょう。オレの合格一緒に祈ってくださいよ。


 ……え、佐々木のこと?


 あー……聞いたんですか。いえ……すいません。黙ってて。

 

 ……はい、自殺だったらしいです。いや、具体的な死因とかは何も。死んだってのも学校では伏せられてて、辞めたってだけ全校集会でさらっと言われて。

 ……でもその後、PTAやってる松本の母さんが校長から聞き出してきて、一気に広まりました。


 学校では変な噂になってます。――佐々木の幽霊が出るって。


 そりゃ噂にもなりますよね。あいつがセンパイの妹さんにストーカーしてた件、学校中の噂になってましたし。そんなときに加害者が自殺したら、誰でも好奇心ビンビンになるでしょうよ。


 ……最初は、普通の噂だったんですよ。妹さんのクラスの教室の近くに人影が見えるって。誰もそこまで怖がってなかったです。……はじめは。


 ってのは、しばらくしてから、ちょっと……おかしなことになってきて。

 

 二年の女子……妹さんとはそんな仲良く無かったんじゃないかな。クラス違う、ちょっと派手な感じのグループのやつ。

 

 そいつが、その……ちょっとヒステリーみたいになっちゃって。


 昼休みとか、授業中に突然叫んだりしてたらしいです。オレも見ました。体育の授業で、オレのクラスとその二年がグラウンド隣になった時、そいつ……急に叫びだしたんですよ。

 

 なんだっけな……泣き叫びながら「私のせいじゃない!」とかなんとか、言ってました。


 後で聞いたんですけど、そいつ、佐々木に結構キツイこと言ってたらしいんですよね。面と向かって。

 

 ストーカーの件を……なんだろな、イジる、みたいな。でもそれって佐々木の自業自得なわけじゃないですか。加害者はアイツなわけだし。


 でも、実際佐々木が死んだら……自責の念、っていうんすかね。それでちょっとおかしくなっちゃった、みたいな感じなのかな。オレの予想っすけど。


 まぁ、そんな感じで。佐々木の呪いだってことになって、みんなそこそこビビってます。


 ……そいつ、今は学校来てないらしいです。不登校ってやつで。珍しくもないですけど、ちょっとかわいそうですよね。


 悪いのは佐々木なのに。死んだら被害者ヅラして――なんか、気分悪いなって、思うんですよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る