大正写真館
大正写真館は、そのショッピングモールの三階にあるフォトスタジオです。
ガラスケースの中には、記念日に撮られたと思わしき写真が飾られており、店内には子供用の貸衣装の数々がハンガーにかけられています。店の奥が撮影スペースになっているようです。
あなたはふと足を止め、写真の数々を眺めます。産まれた時、七五三、誕生日、成人式など、節目に撮られたと思わしき微笑ましい写真が展示されています。
微笑ましさに頬を緩めた瞬間――その写真の中に、あなたは見知った顔を見つけます。
それはあなたの大切な人、またはよく見知った人の、胸から上を写した写真です。穏やかな微笑みを浮かべ、フレームの中に収まっています。
いつの間にこんな写真を撮ったのだろう――そう思いながらそれを見ていると、そのフォトスタジオから一人の男――店主でしょうか――が出てきて、あなたに話しかけます。
「良いお写真ですよねぇ」
あなたは突然、知らない人間に話しかけられて戸惑うことでしょう。ですが、店主は気にしない様子で話し続けます。
「良い遺影になったと、喜んでおられましたよ」
遺影、という単語に、あなたは更に困惑します。被写体の人物は、自ら遺影を撮りに来るなんてことはありえないように思うからです。
あなたが、何と言ったら良いか考えあぐねていると、店主が再び口を開きます。
「お前のせいですよ」
あなたは店主の顔を見つめます。店主は相変わらず満面の笑みで、ゆっくりと言葉を続けます。
「お前のせいです」
あなたは怖くなり、足早にその店先を離れます。
「いくら贄を捧げても、穢れは逆にはなりませんよ」
店主はあなたの後ろ姿に向かってそう言うと、あなたの後ろ姿をいつまでも笑顔で見送っています。いつまでも、いつまでも。
このフォトスタジオがあるショッピングモールはどこにありますか。
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