レディースファッション Luréva(ル・レーヴァ)

「Luréva(ル・レーヴァ)」は、そのショッピングモール二階にある女性向けアパレルショップです。顔のない二体のマネキンが入口に立って、商品を身にまといアピールしています。


 ターゲットの年齢層は二十から三十代。オフィスで着用できそうなコンサバティブなファッションアイテムを取り揃えています。


 店内には試着室が一つしかないようで、休日の混雑時には試着室待ちの整理券が配られます。


 店内を見回っているあなたは、一人の若い女性が店員に食って掛かっているのを見つけます。


「ちょっと、試着室まだ空かないの?」

「申し訳ありません。あとお二人、お待ちいただいておりまして……」

「まだ二人もいるの? もう十五分も待ってるんだけど!」


 明らかに苛々した様子の女性は、声を荒げ――ふと、視線を使用中の試着室の奥へと移します。


「なんだ、もう一部屋あるじゃない」

「……え? ああ、すいません、そこは貼り紙にもあるように故障中でして」


 店員の言う通り、その試着室の閉ざされたカーテンには「故障中」と書かれた紙が貼り付けられています。


「故障中って……カーテンは問題なさそうだし、鏡も見えるじゃない。ここでいいわ。使うわよ」

「ああ、お客さま」


 女性は試着室の中を覗き込むと、店員の制止を無視して中へと踏み込みます。カーテンが閉じてすぐ

 

「――あっ」


 ――と、まるで息を呑むような声が聞こえたのを最後に、試着室は静寂に包まれます。


「あーあー」


 店員は頭を掻きながらカーテンを開けますが、そこには――誰もいません。先程入っていった女性は、跡形もなく消え去っています。


「……まぁ、いっか」


 店員はぼそりとつぶやき、カーテンの貼り紙に赤ペンで何やら書き足します。


「あ、ご試着、いかがでしたか? ……よくお似合いですね!」


 そう言って、もう一つの試着室へ接客に行ってしまいます。


 このアパレルショップがあるショッピングモールはどこにありますか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る