コーヒーショップ&カフェ ブルーフォレスト

 「コーヒーショップ&カフェ ブルーフォレスト」は、そのショッピングモール四階の飲食店街にある喫茶店です。


 レジ横のスペースではコーヒー豆の販売を行っています。カフェスペースからはかぐわしいコーヒーの香りが漂い、軽食メニューの提供もあります。


 このカフェでは時折、店のすぐ前でコーヒーの試飲販売を行っています。

 青いエプロンをつけた店員がトレイを持ち、小さな紙コップに注がれたコーヒーを笑顔で通行人に差し出します。

 

 コーヒーの在庫を置くワゴンの上には提供されているコーヒーの種類とその説明が書かれています。そこまでしっかりと読む人は稀なようですが。

  

「なんだこれ?」


 試飲をした通行人を眺めているあなたは、そのうちの一人――コーヒーを飲み干した若い男性の困惑した声を聞きます。男性は紙コップの中身を見て眉を顰めています。


 紙コップの底には、赤い油性マジックで書かれたと思しき「にえ」という一文字が現れています。

 

 それはお世辞にも上手い字とは言えず、子どもが書いたようながたがたとした線で書かれています。それを見たあなたは、どこか不気味な印象を受けるでしょう。


 男性が戸惑っていると、コーヒーを配っていた店員がその手元を覗き込みカップの底を確認すると目を輝かせて手をたたきます。


「おめでとうございます!」

「……え? 何?」

「あなたは四十人目の『にえ』に、選ばれました!」

「は?」


 戸惑う彼の周りに、わらわらと店員が集まってきます。


 ――おめでとうございます! おめでとうございます! おめでとうございます! おめでとうございます! 


 店員たちは一様に祝福の言葉を述べながら、男性の四肢を拘束します。

 もちろん男性は抵抗しますが、先程まで賑わっていたフロアからはいつの間にか客の姿は消えており、彼の声を聞く者はいません。


 店員たちは、男性を抱えて店の奥――キッチンへ入っていきます。しばらくすると、男性の叫び声は止み、フロアも元の活気を取り戻します。

 

 このコーヒーショップがあるショッピングモールはどこにありますか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る