25 夏ミカン・リターンズ

■25 なつミカン・リターンズ


 さてそと冒険ぼうけんくのも一段落いちだんらくしたころ。


「ねえねえ、なつミカンのアルバイトとかどうかしら」


 わたしがみんなをさそってみる。


「いいねぇ、どんなことするの?」


 サエナちゃんがいてくる。


貴族きぞくさま屋敷やしきにわによくえているでしょ。あれを収穫しゅうかくするの」

「なるほど、さすがトエ。おそれをらない!」

「まぁね。でも大丈夫だいじょうぶよ」


 そう。秘密ひみつだけれど貴族きぞくおそれられているけれど、実際じっさいにはヘマをしなければおこられることもない。

 かれらだって普通ふつう人間にんげんなのだ。


「じゃ、みんなできましょう」

「「「はーい」」」


 ということで冒険者ぼうけんしゃギルドで仲介ちゅうかいしてもらい、貴族きぞく屋敷やしきなつミカンの収穫しゅうかくのアルバイトをする。


「えっと、今日きょうはエルディアン男爵だんしゃくだっけ」

「そうですね」


 地方ちほう都市としなので男爵だんしゃくでも十分じゅうぶん高位こういであり、立派りっぱなお屋敷やしきだった。


今日きょうはよろしくおねがいします」

「「「よろしくおねがいします」」」

「はい。みなさんよくきました。わたしはエルディアンやとわれてる庭師にわしのジョージです」

「ジョージさん」


 ジョージさんに案内あんないされて、表側おもてがわから裏側うらがわまわむ。


「いっぱい、ありますね」

「はい。なつミカンはよくえますね。手入ていれもしやすくあまりたかくならないので」

「なるほど」

「ではおねがいします」

「「「「はーい」」」」


 みんなで手分てわけをしてになっているなつミカンをナイフでっていく。

 くっついているえだおもったより頑丈がんじょうで、でプチッてれるほどではなかった。


れました」

「……こっちも」

「えへへ、できましたにゃ」


 みんなうれしそうに、両手りょうてってバッグへとれていく。

 にんでやるともちろん一人ひとりでやるよりずっとはやい。


「みなさん、おちゃ時間じかんにしましょう」

「「「はーい」」」


 さんのおちゃにおばれする。


紅茶こうちゃにクッキーだ」

「……クッキー」

美味おいしいにゃ」


 こういうおもてなしにもみなれていないもんね。

 おっかなびっくりカップをかたむける。

 そうしてクッキーを頬張ほおばる。みんな笑顔えがお

 やったね。美味おいしいね。

 みんなでがった。


作業さぎょう再開さいかいしよっか」

「「「はーい」」」


 やる十分じゅうぶん作業さぎょう再開さいかいする。

 なつミカンをりまくる。たくさんなっているので大変たいへんだ。

 どんどんバッグへとれていく。


 そうして夕方ゆうがた、やっと全部ぜんぶ作業さぎょう終了しゅうりょうした。


「はい、わり」

「「「「ありがとうございました」」」」

「はい、ありがとうねぇ、ちっちゃいのにえらいねぇ」


 お屋敷やしきひとにもほめてもらった。


 みんな報酬ほうしゅうもらってなつミカンを冒険者ぼうけんしゃギルドへ納品のうひんけばわりだ。


「はい、なつミカンの納品のうひんにきました」

「そういえば、お手伝てつだいしてるんだったわね」

「そうです!」

「えらい、えらい」


 こうして代金だいきんって、一緒いっしょていた庭師にわしひとにおかねわたす。


「はい、これで完了かんりょうです。おつかさま

「「「「やった」」」」


 順調じゅんちょうにアルバイトのお仕事しごとができて、ほっと一安心ひとあんしんだ。


 そういう貴族きぞく屋敷やしき何軒なんけんもギルドに紹介しょうかいしてもらう。

 わたしたちはそのうちに貴族きぞくいえあいだうわさになったようで、評判ひょうばん評判ひょうばんび、なつミカンの収穫しゅうかく依頼いらいまでギルド経由けいゆでくるようになった。


 毎日まいにちちがいえなつミカンを収穫しゅうかくしにいく。

 土日どにちはおやすみだ。

 おおきないえでは三日みっかかかるほど何本なんぼんえてあるいえもあった。


 どのいえでもなつミカンをえるのだけど、収穫しゅうかく手間てましんでそのままにしてあるいえもあったのだ。

 わたしたちがちょうど収穫しゅうかくのお手伝てつだいをするというのでちょうどいいからとしてやとってくれるいえもある。

 それからほか貴族きぞくいえでの実績じっせきもあって、やっとれてくれるようないえもあった。


毎日まいにち毎日まいにち大変たいへんだぁ」


 サエナちゃんがよる孤児院こじいんでぶつぶつとっていた。

 まぁそうだね。

 なんだかお仕事しごとみたいになってしまっている。

 でも、みんななんだかんだってけっこうたのしんでいるから、大丈夫だいじょうぶだろう。


 お土産みやげでいくつももらうものだから、孤児院こじいんではなつミカンがあま気味ぎみだ。

 最初さいしょひとつをってみんなでちょっとずつべていたのがなつかしい。

 いまでは一人ひとり一個いっこくらいある。


なつミカン、甘酸あまずっぱくて美味おいしい」

「これも全部ぜんぶ、トエたちのおかげだね」

「まぁね、えへへ」

冒険者ぼうけんしゃぐみそとはたらきにってるんだもんねぇ」

「トエちゃんたち、頑張がんばってるね」


 いろいろこえけてくる。

 心配しんぱいこえすこしあったみたいだけど、いまのところ大丈夫だいじょうぶだ。

 というかもし危険きけんなことがあってもわたしたちには魔法まほうもあるので、じつ対処たいしょできるつもりでいる。

 もちろん相手あいてがそれ以上いじょう実力者じつりょくしゃだった場合ばあいはどうにもならないけど、そのときはそのときだ。


 市内しないでもなつミカンがあちこちでセールでられて、いまちょっとしたブームになっていた。

 やすべられる機会きかいはそれほどないので、プチまつりみたい。

 どの家庭かていでもひとつ、ふたつとっていくらしいのだ。


 こうやって市民しみん生活せいかつ影響えいきょうあたえるなんて、おもってもみなかった。


「これもそれもトエちゃんたち、さまさまだねぇ」


 サファエ院長いんちょうわたしたちをて、おほほほ、とほおにあててほめてくれた。

 なんだか、立派りっぱになったつもりというか、どこか気恥きはずかしい。


 こんなかんじでなつミカンを収穫しゅうかくしてまわ日々ひびぎていった。

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