[総ルビ]異世界転生して貴族だったけど孤児院に捨てられた私は這い上がる ～女の子だって薬草、キノコ、苺とか採取してスローライフしよう～(web版)

18 外の森と携帯食料

■18　外（そと）の森（もり）と携帯（けいたい）食料（しょくりょう）

　森（もり）をリソース・サーチで探（さが）した。

　結果（けっか）はウサギが3か所（しょ）、遠（とお）くにウルフの反応（はんのう）ありだ。

　それからスライムが沢山（たくさん）。

　ちょっとよく分（わ）からない。

　しかたがない。魔法（まほう）「エリア・サーチ」。

　私（わたし）の魔力（まりょく）が100だと仮定（かてい）して、リソース・サーチは魔力（まりょく）消費（しょうひ）2。エリア・サーチは魔力（まりょく）消費（しょうひ）8くらいだろうか。

　予測（よそく）値（ち）だからあってないかもしれないけれど、そんな感（かん）じ。

　少（すこ）し魔力（まりょく）を使（つか）うけれど、広（ひろ）めにモンスターも検知（けんち）しよう。

　あとエリア・サーチのほうが魔力（まりょく）を使（つか）うぶん、いわゆる逆探知（ぎゃくたんち）リバース・サーチとか魔力（まりょく）感知（かんち）を使（つか）える人（ひと）やモンスターは探知（たんち）されたことに気（き）づくことがあるらしい。

　リソース・サーチのほうが魔力（まりょく）が少（すく）ないので、探知（たんち）範囲（はんい）も狭（せま）いが逆探知（ぎゃくたんち）されにくいのだ。

　隠密（おんみつ）系（けい）とかいると、こちらは探知（たんち）に失敗（しっぱい）して、相手（あいて）には逆探知（ぎゃくたんち）でばれて奇襲（きしゅう）される恐（おそ）れもある。

　だから私（わたし）が密（ひそ）かにこういう魔法（まほう）を使（つか）うと、エミリーさんも気（き）づくかもと思（おも）ってたけど、魔力（まりょく）探知（たんち）系（けい）は持（も）っていないようだ。

「あのエミリーさん、魔法（まほう）はどれくらい？」

「ああね。私（わたし）は短剣（たんけん）が専門（せんもん）で、あと火（ひ）魔法（まほう）がちょっと使（つか）えるくらいだね。風（かぜ）とか探知（たんち）とかはからっきしでねぇ」

「なるほど」

「そういうトエちゃん、何（なに）か使（つか）ってるのかな。魔力（まりょく）は分（わ）かんないけど、動（うご）きに迷（まよ）いがないわね」

「うっ、ええ、ちょっとサーチを」

「そうなのね。それなら言（い）ってくれればいいのに」

「信用（しんよう）できるか、測（はか）ってたので、ごめんなさい」

「いや、いいよ。小（ちい）さいのにしっかりしてるのね。あはは」

「えへへ」

「それで反応（はんのう）は？」

「近（ちか）くにウサギ3つ、北東（ほくとう）の遠（とお）くにウルフの群（む）れがいます。あとは遠（とお）くにウサギが10匹（ひき）以上（いじょう）ばらばらに。スライムはたくさん」

「了解（りょうかい）。じゃあ近（ちか）くのウサギ3匹（ひき）くらいは狩（か）って帰（かえ）ろうか」

「はい」

　適当（てきとう）にスライムを倒（たお）しつつ、ウサギのところへ。

　ガサガサ。

「ウサギ発見（はっけん）、うにゃああぁああ」

　右側（みぎがわ）にいたミリアちゃんがウサギ、正確（せいかく）にはホーンラビットを発見（はっけん）、即座（そくざ）に攻撃（こうげき）をする。

　今回（こんかい）から鉄（てつ）の剣（けん）なので、そこそこの攻撃力（こうげきりょく）だ。

　ただこの剣（けん）、切（き）れ味（あじ）はあんまりよくなくて、分類（ぶんるい）としては打撃（だげき）武器（ぶき）に近（ちか）い。

　ということで、ぶん殴（なぐ）られたウサギはそのままお陀仏（だぶつ）さんになった。

　血（ち）はほとんど出（で）ていなくて、綺麗（きれい）なままだ。

「もう動（うご）かないね」

「……ウサギ死亡（しぼう）」

「私（わたし）はあと2匹（ひき）、倒（たお）してくるね。サエナちゃんはついてきて」

　私（わたし）は了解（りょうかい）を取（と）って他（ほか）のウサギ2匹（ひき）を探（さが）し出（だ）して剣（けん）で一突（ひとつ）きにする。

　最後（さいご）の1匹（ぴき）は場所（ばしょ）が分（わ）かっている私（わたし）が探（さが）して、サエナちゃんに攻撃（こうげき）させてゲットしてきた。

　そうして集合（しゅうごう）してから切（き）れ味（あじ）のいいナイフを取（と）り出（だ）して、血（ち）抜（ぬ）きをしてしまう。

「いつも血（ち）抜（ぬ）きはしているの？」

「はい。ダメでしたか？」

「いいや。サーチ使（つか）えるみたいだからいいけれど、他（ほか）の子（こ）はウルフとか他（ほか）のモンスターが血（ち）の臭（にお）いで集（あつ）まってくることがあるから、気（き）を付（つ）けるのよ。周囲（しゅうい）への警戒（けいかい）は続（つづ）けてね」

「「はーい」」

「よろしい。もし周囲（しゅうい）にまだ敵（てき）がいるなら、血（ち）抜（ぬ）きは最優先（さいゆうせん）ではないわ。血（ち）抜（ぬ）きしたほうが美味（おい）しいのはその通（とお）りなんだけどね。その辺（へん）の判断（はんだん）は難（むずか）しいわね」

　まあそうだろうな。

　一応（いちおう）、リソース・サーチで周辺（しゅうへん）を探（さぐ）る。

「ウルフは近（ちか）づいてきてないみたいです。大丈夫（だいじょうぶ）」

「はい。ありがとうね」

「いえ」

　血（ち）は剣（けん）で軽（かる）く穴（あな）を掘（ほ）り、そこへ捨（す）てている。

　血（ち）抜（ぬ）き作業（さぎょう）が終（お）わった。

　穴（あな）を埋（う）め戻（もど）して目立（めだ）たないようにする。

「はい、後処理（あとしょり）も終（お）わりです」

「けっこう手慣（てな）れてるわね。感心（かんしん）ね」

「えへへ」

「小（ちい）さな森（もり）で、こういうことはしてましたから」

　サエナちゃんが補足（ほそく）してくれる。

「それなら、あまり言（い）うこともないわね。ただ小（ちい）さな森（もり）ならウルフとか出（で）ないと思（おも）うけど、外（そと）の森（もり）はフォレストウルフが2チームほど縄張（なわば）りにしているわ。あと流（なが）れてくる敵（てき）がたまにいるの。ゴブリンとかコボルトがそうね」

「「はーい」」

　お姉（ねえ）さんの知識（ちしき）は正確（せいかく）だ。

　自分（じぶん）の知識（ちしき）とも相違（そうい）がないことを確認（かくにん）して、納得（なっとく）する。

　私（わたし）たちは血（ち）抜（ぬ）き地点（ちてん）から素早（すばや）く移動（いどう）した。

「さてそろそろお昼（ひる）にしましょうか」

「「はーい」」

「わわ、お昼（ひる）にゃああ」

　ちょうどいい感（かん）じに大（おお）きな広葉樹（こうようじゅ）の下（した）に来（き）た。

　ここはこの木（き）の周（まわ）りが少（すこ）しだけ拓（ひら）けていて、他（ほか）の場所（ばしょ）よりもいくぶんか明（あか）るかった。

「ここ、いい場所（ばしょ）だわ。ここでいいかしら？」

「「いーです」」

　適当（てきとう）にみんなで座（すわ）る。

　お昼（ひる）ご飯（はん）はというと、ギルドで貰（もら）った携帯（けいたい）食料（しょくりょう）だ。

「「いただきます」」

　もぐもぐ。もそもそ。もぐもぐ。

「あんまり美味（おい）しくないね」

「もそもそしてる」

「にゃぁ、口（くち）の中（なか）があばばばにゃあ」

　携帯（けいたい）食料（しょくりょう）は小麦粉（こむぎこ）にハーブを入（い）れて固（かた）めて焼（や）いたみたいなもので、黒（くろ）パン（ぱん）と同（おな）じくらい固（かた）い。

　それからもそもそしていて、口（くち）の中（なか）の水分（すいぶん）をみんな吸（す）い込（こ）んでいく。

「ごめんごめん、今（いま）、飲（の）み物（もの）出（だ）すね」

　私（わたし）は井戸水（いどみず）の水筒（すいとう）とコップを出（だ）していって、みんなに配（くば）る。

「はぁ、助（たす）かるわ。お水（みず）お水（みず）、んくんく」

「……お水（みず）」

「にゃはぁ、お水（みず）だにゃぁ」

「ああの、エミリーさんもいります？」

「ああ、ありがとう。でも大丈夫（だいじょうぶ）、自分（じぶん）のはあるから」

　さすが先輩（せんぱい）冒険者（ぼうけんしゃ）。ちゃんと持（も）っているようだ。

　私（わたし）は夏（なつ）ミカンを1つ取（と）り出（だ）して、ナイフで剥（む）く。

　5等分（とうぶん）してそれをみんなに配（くば）っていく。

「甘（あま）ずっぱいね」

「……ミカンおいち」

「ミカンにゃミカン」

「エミリーさんもどうぞ」

「ああ、ありがとう。……うん、美味（おい）しいな」

　ふむ、まあまあ美味（おい）しいようだ。

　私（わたし）も食（た）べてみる。

　少（すこ）し酸（す）っぱいけれど、甘（あま）い。食（た）べたことがある夏（なつ）ミカンの味（あじ）だ。

　なかなか美味（おい）しい。

「もう1個（こ）、いる？」

「「はーい」」

「ください、にゃあ」

「うふふ、もらえるかい？」

　ということだったので、もう1個（こ）剥（む）いてみんなに分（わ）けた。

　本来（ほんらい）ならまだ活動（かつどう）時間（じかん）なのだが、袋（ふくろ）がいっぱいだ。

　夏（なつ）ミカン、シメジ、ホーンラビットでぎゅうぎゅうだ。

「さてもう入（はい）らないわね。一度（いちど）戻（もど）りましょう」

「「はーい」」

　こうして来（き）た道（みち）を戻（もど）り、西門（にしもん）から入（はい）って中央（ちゅうおう）の冒険者（ぼうけんしゃ）ギルドに向（む）かうのだった。