[総ルビ]異世界転生して貴族だったけど孤児院に捨てられた私は這い上がる ～女の子だって薬草、キノコ、苺とか採取してスローライフしよう～(web版)

15 冒険の準備

■15　冒険（ぼうけん）の準備（じゅんび）

　冒険者（ぼうけんしゃ）ギルドで登録（とうろく）できて、さっそく冒険（ぼうけん）に出（で）よう。

　なんてするわけはない。

　まずは薬屋（くすりや）さんに行（い）こう。

　RPGとかだと道具屋（どうぐや）さんとかになっているけれど、この世界（せかい）ではポーションは薬屋（くすりや）さんだ。

　ポーションには使用（しよう）期限（きげん）があり、ひと月（つき）前後（ぜんご）でダメになってしまう。

　一方（いっぽう）の道具屋（どうぐや）さんは、火打石（ひうちいし）、薪（まき）、テント、縄（なわ）、携帯（けいたい）食料（しょくりょう）、干肉（ほしにく）、鍋（なべ）、皿（さら）とかの道具類（どうぐるい）を売（う）っている。

　主（おも）に日持（ひも）ちがいいものを扱（あつか）っている。

　携帯（けいたい）食料（しょくりょう）と干肉（ほしにく）は持（も）って2か月（げつ）くらいだろうか。

「ということで、薬屋（くすりや）さんね」

「「はーい」」

　といってもギルドに併設（へいせつ）されているので、そこで。

　本当（ほんとう）のことを言（い）うと私（わたし）はアンチドートもヒールも使（つか）えるので、薬（くすり）がいるかと言（い）われると疑問（ぎもん）ではあるけど、私（わたし）個人（こじん）に依存（いぞん）すると他（ほか）の子（こ）の常識（じょうしき）がおかしくなってしまう。

　そういうことは避（さ）けたいので、普通（ふつう）の子（こ）なら寄（よ）るであろう、薬屋（くすりや）さんでポーションを買（か）う。

「初級（しょきゅう）ポーション3つ、解毒（げどく）ポーション2つください」

「あいよ、あらあら、かわいいお客（きゃく）さんだね。あれ、でも腰（こし）の剣（けん）を見（み）るに、冒険者（ぼうけんしゃ）見習（みなら）いかな」

「そうです！」

「はい、元気（げんき）なのはいいね。無理（むり）するんじゃないよ」

「「はーい」」

　初級（しょきゅう）ポーション1つ銀貨（ぎんか）2枚（まい）。解毒（げどく）ポーションも同（おな）じく銀貨（ぎんか）2枚（まい）。しめて金貨（きんか）1枚（まい）だ。

　思（おも）ったよりもけっこう痛（いた）い出費（しゅっぴ）で、涙目（なみだめ）な私（わたし）だけれど、ここは仕方（しかた）がない。

　ポーション材料（ざいりょう）の草（くさ）が高値（たかね）で売（う）れるわけだから、当然（とうぜん）として完成（かんせい）品（ひん）のポーションも高（たか）いのが道理（どうり）というものだ。

　命（いのち）は大事（だいじ）だ。

　死（し）にそうになったら初級（しょきゅう）ポーションじゃ助（たす）からないけど、中級（ちゅうきゅう）や上級（じょうきゅう）ポーションはとてもお高（たか）いので、現（げん）段階（だんかい）では諦（あきら）めよう。

　森（もり）の奥（おく）まで行（い）かなければ、それほどひどい目（め）には遭（あ）わないだろう。

　ダメージを受（う）けた時（とき）に回復（かいふく）する手段（しゅだん）は購入（こうにゅう）した。

　さて次（つぎ）はダメージを減（へ）らす努力（どりょく）をしよう。

「次（つぎ）はそっちのコーナーで防具（ぼうぐ）を買（か）お」

「うんっ」

　残（のこ）りの資金（しきん）は金貨（きんか）3枚（まい）ほど。

　冒険者（ぼうけんしゃ）ギルドには初心者（しょしんしゃ）冒険者（ぼうけんしゃ）のための、子供（こども）用（よう）装備（そうび）が売（う）っているのだ。

　こういう特定（とくてい）者（しゃ）向（む）けの装備（そうび）は、昔（むかし）ならオーダーメイドだったのだろうが、最初（さいしょ）はギルドにくるし、ギルドが売（う）れば安心（あんしん）だ。

　まだ馴染（なじ）みの武器（ぶき）防具（ぼうぐ）屋（や）とかもないわけだし。

　受付嬢（うけつけじょう）のお姉（ねえ）さんが出（で）てきて、お手伝（てつだ）いしてくれる。

　4人（にん）用（よう）の革（かわ）防具（ぼうぐ）だ。軽（けい）鎧（よろい）に分類（ぶんるい）される。

　子供（こども）用（よう）のブレストプレートみたいなやつとなっている。

　本物（ほんもの）のブレストプレートは銃（じゅう）が発展（はってん）してきて薄（うす）い全身（ぜんしん）鎧（よろい）が無意味（むいみ）になり厚（あつ）めの金属（きんぞく）で急所（きゅうしょ）だけを守（まも）るように変化（へんか）したものだったはずだけど、その辺（へん）の細（こま）かいことはいいの。

「オーク革（がわ）のブレストプレートね。子供（こども）用（よう）4人（にん）分（ぶん）。ファーストチョイスによく使（つか）われるの」

「なるほどぉ」

　値段（ねだん）は1つ銀貨（ぎんか）2枚（まい）。たぶん破格（はかく）の安（やす）さだと思（おも）う。

　まあオーク革（がわ）はそんなに強（つよ）くないし、この周辺（しゅうへん）でも森（もり）の奥（おく）とかで出（で）るようなので、材料（ざいりょう）の地産（ちさん）地消（ちしょう）ができてて安（やす）いんだろう。

　もしかしたらギルドの支援金（しえんきん）とかで安（やす）いのかもしれないけど。

「じゃあそれ4人（にん）分（ぶん）。よろしくです」

「はい、確（たし）かに」

　お姉（ねえ）さんに金貨（きんか）を渡（わた）して、着（き）させてもらう。

　茶色（ちゃいろ）いワンピースの上（うえ）に冒険者（ぼうけんしゃ）風（ふう）のブレストプレートが装備（そうび）できた。

「えへへ、冒険者（ぼうけんしゃ）みたい」

「……私（わたし）冒険者（ぼうけんしゃ）」

「冒険者（ぼうけんしゃ）にゃあ」

　これで心臓（しんぞう）を一突（ひとつ）きとかは防（ふせ）げる。

　万（まん）が一（いち）の場合（ばあい）は手足（てあし）がもげちゃうけど、しょうがないよね。

　アイテムボックスに入（はい）るなら入（い）れたり、引（ひ）きずったりして、持（も）って帰（かえ）ってくるか。

　上級（じょうきゅう）ポーションならくっつくだろう、たぶん。

「似合（にあ）う？」

「……まあまぁかな」

「にゃはは」

　私（わたし）が手足（てあし）がもげるとか考（かんが）えているとも、露（つゆ）知（し）らず楽（たの）しそうに見（み）せ合（あ）っていた。

　まあ、こういうダークなことは私（わたし）に任（まか）せて、きゃわきゃわしてていいよ。

「これで準備（じゅんび）できたかな？」

「うん。たぶん」

　今（いま）のところ背負（せお）い袋（ぶくろ）は私（わたし）だけか。

「えっと、背負（せお）い袋（ぶくろ）の安（やす）いの3つください」

「はい銀貨（ぎんか）3枚（まい）です」

　今（いま）まで私（わたし）がお古（ふる）の背負（せお）い袋（ぶくろ）を背負（せお）っていたけれど、みんなの分（ぶん）も買（か）う。

　獲物（えもの）が増（ふ）える予定（よてい）なので、みんなで持（も）って帰（かえ）ってもらわなきゃ。

　背負（せお）い袋（ぶくろ）は私（わたし）のより丈夫（じょうぶ）そうで新（あたら）しい。

　銀貨（ぎんか）1枚（まい）はちょっと高（たか）いけれど、まあこんなものだろう。

　これで草原（そうげん）で薬草（やくそう）摘（つ）みをする冒険者（ぼうけんしゃ）少女（しょうじょ）たちに見（み）えるだろうか。

「はい、これおまけしてあげるね」

　携帯（けいたい）食料（しょくりょう）を人数（にんずう）分（ぶん）貰（もら）った。

「はい、おーけー。ではいいかな？」

「「はーい」」

　みんなでギルドを出（で）ていこうとする。

「ちょっと待（ま）ちな」

　さっきまでそこで蒸留酒（じょうりゅうしゅ）を呑（の）んでいたスキンヘッドのおじさんが声（こえ）を掛（か）けてくる。

　ニッと口元（くちもと）を釣（つ）り上（あ）げて威嚇（いかく）してくる。怖（こわ）い。

「ひゃっ、な、なななな、なんで、すか？」

「……なに」

「にゃあああ」

　私（わたし）はとりあえずサエナちゃんが質問（しつもん）したので、踏（ふ）みとどまって様子見（ようすみ）をしよう。

　うむむ。魔法（まほう）「鑑定（かんてい）」。

【ドゴーグ・バラリッド】

　ふむ、名前（なまえ）は覚（おぼ）えておこう。人間（にんげん）に鑑定（かんてい）を掛（か）けるのは久（ひさ）しぶりだ。

　といってもスキンヘッドは他（ほか）にあんまりいないので、見分（みわ）けはつく。

「お前（まえ）ら、ぺーぺーだろ、幼女（ようじょ）4人（にん）だけで城壁（じょうへき）の外（そと）へ行（い）くつもりか？　ああんん？」

「ひゃああああ」

　サエナちゃんは完全（かんぜん）にビビってしまっている。

　いや、しかし、このおっさんの言（い）っていることは、めっちゃくちゃ怖（こわ）そうに見（み）えるだけで、心配（しんぱい）してくれてるんだよね？　んん？

「俺（おれ）を雇（やと）え！　1日（にち）、夕方（ゆうがた）まで銀貨（ぎんか）2枚（まい）。お昼（ひる）は俺（おれ）の奢（おご）りだ」

「ひゃああ、はああいいい」

　このおっさん連（つ）れていかないといけないの？

　ええぇぇぇ。