[総ルビ]異世界転生して貴族だったけど孤児院に捨てられた私は這い上がる ～女の子だって薬草、キノコ、苺とか採取してスローライフしよう～(web版)

12 森のお花畑とイチゴ

■12　森（もり）のお花畑（はなばたけ）とイチゴ

　今日（きょう）も朝（あさ）からヤギのミルクを搾（しぼ）ったら、みんなを誘（さそ）って森（もり）探索（たんさく）に向（む）かうことにする。

　メンバーは私（わたし）トエ、サエナちゃん、シリスちゃん、さらにミリアちゃんが正式（せいしき）に加（くわ）わった。

　正式（せいしき）といっても、なにか決（き）め事（こと）があるわけじゃないけど。

　森（もり）には色々（いろいろ）あって、自然薯（じねんじょ）というかヤマトイモのようなものも生（は）えている。

　ただ掘（ほ）り出（だ）すのが面倒（めんどう）くさいのと、孤児院（こじいん）の人数（にんずう）分（ぶん）集（あつ）めるとなると、何個（なんこ）も掘（ほ）らないといけない。

　さすがにきついので、いつも見（み）て見（み）ぬふりをしている。

　この世界（せかい）ではヤマトイモのようなネバネバのイモは栽培（さいばい）されていない。

「スライムだぁ、はい、どうぞ」

「え、じゃあ、サエナいきまーす、えいやあ」

　サエナちゃんがスライムを攻撃（こうげき）する。なんとか斬（き）りつけて核（かく）の横（よこ）をざっくりいって、核（かく）がスライムからぐにゅっと出（で）てくる。

　核（かく）さえ取（と）ってしまえば、スライムは死（し）んでしまう。

　大（おお）きい戦利（せんり）品（ひん）は私（わたし）が代表（だいひょう）して持（も）っているか、スライムの核（かく）みたいなものは分配（ぶんぱい）している。

　大（おお）きい戦利（せんり）品（ひん）の場合（ばあい）はライエルさんに売却（ばいきゃく）後（ご）、金額（きんがく）の半分（はんぶん）くらいは私（わたし）に裁量（さいりょう）権（けん）があって、胡椒（こしょう）とかトウガラシとかを買（か）うお金（かね）になる。

　残（のこ）りは分配（ぶんぱい）で各（かく）個人（こじん）のお小遣（こづか）いだ。

　サエナちゃんは、銀（ぎん）で鳥（とり）の翼（つばさ）の形（かたち）のペンダントを購入（こうにゅう）していた。

　一応（いちおう）、防御（ぼうぎょ）のお守（まも）りなのだそうだ。

　本当（ほんとう）かどうかよく分（わ）からないけれど、魔法（まほう）とか魔道（まどう）具（ぐ）とかあるので、もしかしたらちゃんとステータス的（てき）な防御（ぼうぎょ）アップ効果（こうか）などがあるのかもしれない。

「またスライムだよぉ、それじゃあミリアちゃん」

「はいにゃ！　頑張（がんば）りますにゃ！　えいにゃ！」

　ミリアちゃんの木剣（ぼっけん）がスライムを両断（りょうだん）する。

　真（ま）っ二（ぷた）つになったスライムから核（かく）が零（こぼ）れ落（お）ちて、はい終了（しゅうりょう）。

　みんなそれなりにスライムくらいなら倒（たお）せる。

　ふむふむ、ちょっとずつ経験（けいけん）して、強（つよ）くなっていってね。

　さてさて、なにかないかな？

　魔法（まほう）「リソース・サーチ」。

　うーん。スライム多数（たすう）。あとブラウンシメジタケが一（いっ）か所（しょ）ある。

　スライムを叩（たた）きつつ、シメジの方向（ほうこう）へ進（すす）もうか。

　さらにスライムを4匹（ひき）討伐（とうばつ）して、キノコのところへ。

「お、ブラウンシメジタケだよ」

「おお、あのうまいやつだね」

「……キノコ」

「やったにゃ！」

　シメジタケは切（き）り株（かぶ）に4株（かぶ）ほどに分（わ）かれて発生（はっせい）していた。

　うんうん、これくらいあれば十分（じゅうぶん）食（た）べられる。

　本日（ほんじつ）の収穫（しゅうかく）は上々（じょうじょう）だ。

　そこそこ移動（いどう）したので、もう一度（いちど）魔法（まほう）を使（つか）う。

　魔法（まほう）「リソース・サーチ」。

　うん、ホーンラビットの気配（けはい）がある。

　ウサギさんは気配（けはい）察知（さっち）が得意（とくい）であまり人前（ひとまえ）に姿（すがた）を現（あらわ）さないけれど、こうして出（で）てくるやつもいる。

　ちょっと進（すす）んで、様子（ようす）を窺（うかが）う。

「ホーンラビットだよ、私（わたし）やるね」

「あ、うん」

「おりゃあああ」

　木剣（ぼっけん）を油断（ゆだん）していたウサギちゃんに直撃（ちょくげき）させる。

　ウサギちゃんは私（わたし）の強（きょう）撃（げき）に、致命的（ちめいてき）なダメージを食（く）らう。

　きゅきゅぅ。

　鳴（な）き声（ごえ）を上（あ）げて、そのまま倒（たお）れた。

「ウサギさん安（やす）らかにお眠（ねむ）りください――セドーレ」

「「――セドーレ」」

　みんなでお祈（いの）りを捧（ささ）げて、ウサギさんを血（ち）抜（ぬ）きして回収（かいしゅう）する。

　これで今日（きょう）はウサギとキノコのスープだ。

　またしばらく進（すす）む。

　ぴゅぎ、ぴゅぎ。

　何（なに）かの動物（どうぶつ）が目（め）の前（まえ）に飛（と）び出（だ）して来（き）て、警戒（けいかい）の鳴（な）き声（ごえ）を上（あ）げた。

「なんだろうあれ」

　魔法（まほう）「鑑定（かんてい）」。

【ノリス】

　野（の）リスだね。

　動物（どうぶつ）は色々（いろいろ）いる。

　無視（むし）しているけれど、他（ほか）にはモンスターじゃない普通（ふつう）のヘビとかもいる。

　リスも焼（や）いて食（た）べると美味（おい）しいとは聞（き）くけど、どうだろうね。

　魔法（まほう）「リソース・サーチ」。

　ああ、これは、ふんふん。目標（もくひょう）地点（ちてん）をそこに定（さだ）める。

「ちょっと歩（ある）くね」

「あ、うん」

　みんなで移動（いどう）する。

「わあぁ」

「すごいぃ」

「……綺麗（きれい）」

「すごいにゃ、すごいにゃ」

　そこは昔（むかし）大木（たいぼく）が生（は）えていたのだろう場所（ばしょ）で、真（ま）ん中（なか）には大（おお）きな切（き）り株（かぶ）がある。

　そして斜（なな）めに倒（たお）れている木（き）が見（み）える。

　現在（げんざい）はその周（まわ）りが、一面（いちめん）木（き）がなくて、お花畑（はなばたけ）になっていたのだ。

　森（もり）の中（なか）の花畑（はなばたけ）だ。

　薄（うす）ピンクの絨毯（じゅうたん）みたいになっている。

　一面（いちめん）のサクラ草（そう）だ。

　しかし昨日（きのう）、ライエルさんが来（き）たばかりなので、今（いま）採取（さいしゅ）すると鮮度（せんど）が悪（わる）くなってダメになってしまう。

「これは綺麗（きれい）だけど、採取（さいしゅ）はあきらめよう」

「う、うん」

「また、ライエルさんが来（く）る直前（ちょくぜん）にこようか」

「そうだね、うんうん」

「……また」

「うにゃ！」

「じゃあ少（すこ）しだけ休憩（きゅうけい）」

「うん」

　しばらく、その花畑（はなばたけ）をぼうっと眺（なが）める。

　蝶々（ちょうちょ）なんかもひらひら飛（と）んでいて、妖精（ようせい）とか出（で）てきそう。

　妖精（ようせい）の泉（いずみ）っぽいのもあったけど、花畑（はなばたけ）も素晴（すば）らしい。

　小（ちい）さな森（もり）といっても、その表情（ひょうじょう）はなかなかバラエティーに富（と）んでいる。

　場所（ばしょ）は北門（きたもん）やや東（ひがし）といったところだろうか。

　ちょっと歩（ある）いたら、また木（ぎ）が疎（まば）らで拓（ひら）け気味（ぎみ）の場所（ばしょ）に出（で）た。

　そこかしこで、赤（あか）い実（み）が低木（ていぼく）になっていた。

「わぁ、わぁ、このへん、すごい」

　何（なに）かは分（わ）かってる。一応（いちおう）だけど魔法（まほう）「鑑定（かんてい）」。

【キイチゴ】

　だよね。真（ま）っ赤（か）でつぶつぶが集（あつ）まったキイチゴだ。

　黄（き）イチゴじゃなくて、木（き）イチゴだけど。

「よし、みんなで採（と）ろう」

「う、うん」

「……とる」

「にゃあ」

　必死（ひっし）になってキイチゴを収穫（しゅうかく）した。

　これはごちそうだ。

　この辺（へん）にはまだ来（き）ていなかったので、ノーマークだった。

「んっ、あまい！」

「あまぁ」

「……おいち」

「甘（あま）いにゃ、おいちいにゃぁ」

　イチゴだから、かなりおいしい。

　普段（ふだん）の生活（せいかつ）でお菓子（かし）やデザートなんて出（で）てくるわけもなく、甘味（あまみ）は貴重（きちょう）だ。

　秋（あき）とかになればブドウなんかも甘（あま）いけれど、やっぱりこういうものは美味（おい）しい。

「みんなへ、お土産（みやげ）だね」

　そうだね。孤児院（こじいん）に持（も）って帰（かえ）って、みんなで食（た）べよう。