8 トエの学習教室

■8 トエの学習がくしゅう教室きょうしつ


 午後ごご夕方ゆうがた

 げつすいきんの3かいは、修道院しゅうどういん礼拝堂れいはいどうあつまって、宗教しゅうきょうのお勉強べんきょうをする。

 簡単かんたんえば、神様かみさまはなしをするのだけど、教訓的きょうくんてきなものとか。


かみいましたわ。人類じんるいはみな平等びょうどうであると」

院長いんちょう先生せんせい! あの……失礼しつれいしますにゃ。獣人じゅうじん人類じんるいふくまれないのでしょうかにゃ?」


「いい質問しつもんね。ミリアさん。わたしたちの崇拝すうはいしている神様かみさまはスエルメティスさまですけれど、じつ穏健おんけんのアドラシルというものと、過激派かげきは本人ほんにんたちは崇高すうこうんでいますがヨインバイルとにかれてます。ここまでは、いいですか」

「はい」

わたしたちはアドラシルです。わたしたちは獣人じゅうじんさんたち人類じんるいふくまれるとかんがえています。しかしヨインバイル人々ひとびとはそうではありません。ひとぞくこそが、ただひとつ人類じんるいである、というかんがえなのだそうです」

「へぇ」

わたしたちのくに、ストラーダリス王国おうこく全域ぜんいきがアドラシルですね。西隣にしどなりのメリス王国おうこくはヨインバイルなので、もしくことがあれば、注意ちゅういはしたほうがいいでしょう。ただとおいですから、よほどのことがないと機会きかいはありませんね」


 ふむ。なんだかねむくなってきた。

 まあとにかく、そういうはなし夕食ゆうしょくまえの1時間じかんくらいある。


「あぁわったぁ、わったぁ」

「そうですね、うふふ」


 わたしはサエナちゃんのあからさまな態度たいどわらってしまう。


「ねぇねぇ、トエちゃんは計算けいさん、できるんだよね?」

「はい、一応いちおうは」


 前世ぜんせ知識ちしきもあり計算けいさんもとからできる。この世界せかい数字すうじおぼえたので使つかえる。

 優秀ゆうしゅうなメイドさんに懇願こんがんして、きもおぼえた。


「いいなぁいいなぁ、わたしおぼえたい!」

「そうですか、では夕食ゆうしょくすこし、勉強会べんきょうかいをしましょうか」

「いいねそれ!」

「……いいね」

「あぁ、あぁ、あのね、わたし参加さんかしたいにゃ」


 シリスちゃんとそれから、ミリアちゃんもこえけてきた。


 ミリアちゃん。わたしおなじ8さい

 背丈せたけわたしよりすこちいさい。

 それからみじか黒髪くろかみ黒目くろめ、そしてそして、猫耳ねこみみえている。

 ねこひとぞくなのだ。


 さきほども説法せっぽうであったとおり、ヨインバイルというものがあり、獣人じゅうじん純然じゅんぜんたる人類じんるいにはふくめないとする人々ひとびとがいる。

 このくにはアドラシル多数たすうめるけれど、全員ぜんいんというわけではないため、獣人じゅうじん差別さべつ自体じたいは、この国内こくないにも残念ざんねんながら、しばしばみられる光景こうけいだった。


 うちの伯爵はくしゃくでも獣人じゅうじんメイドは普通ふつうのメイドよりしたられていた。

 うとまれていたわたしには専属せんぞくメイドに獣人じゅうじんあてがわれていて、それが孤児院こじいんときにもってくれたイリヤだった。

 イリヤはうさぎみみぞくで、白髪はくはつ赤目あかめのウサギさんだ。


「うん、みんなで勉強べんきょうしよう! ミリアちゃんも」

「やったにゃぁ」


 孤児院こじいんでもミリアちゃんは、べつ差別さべつされているわけでないのだけど、差別さべつされるのをおそれてか普段ふだんはあまり、ひとちかづかないタイプだったのだ。

 そんな彼女かのじょがこんなふうによろこぶのは、なかなかない。


 みんなでゆうはんべる。

 ほんのすこしハムが増量ぞうりょうされている。みんなで銀貨ぎんかった結果けっかだ。


「さて、それじゃあ勉強べんきょうしよっか」

「はーい」


「なになに、お勉強べんきょう? なんの勉強べんきょうをするの?」


 年長ねんちょう興味きょうみったみたいだった。


計算けいさんです。まずはみからかな」

「ふーん、いいね。わたしたちもきできないんだよねぇ」

「ならさぁ、食堂しょくどうでみんなでやろっか」

「いいねぇ」


 はなしがどんどんおおきくなっていく。


 ということで本当ほんとうはアイテムボックスにはいっているのだが、部屋へやもどって筆記用具ひっきようぐかみたばってもどってくる。


「じゃあ、エー、ビー、シー、ディー、イー、エフ、ジー、復唱ふくしょうしてね」

「「エー、ビー、シー、ディー、イー、エフ、ジー」」


 アルファベットのようなものを順番じゅんばんおおきめにいていく。

 それをかかげて、みんなにせる。


「これが基本きほん文字もじだよ。全部ぜんぶで26あるの。あと普段ふだん使つかうのは数字すうじが1から9と0で10だね」


 英語えいご非常ひじょうているが文字もじ自体じたいちが文字もじ体系たいけいだ。

 その関連性かんれんせいについてくと、論文ろんぶんになってしまいそうだから自重じちょうするけれど、この世界せかいちに地球ちきゅう世界せかいとをつな神様かみさまかかわっていそうな気配けはいかんじる。

 あまりふかさぐると、宗教的しゅうきょうてき問題もんだい関係かんけいしてくるので、スルー安定あんていである。


 こうして文字もじかた勉強べんきょうする。

 みんなにもいておぼえてほしいところだけど、筆記用具ひっきようぐ人数にんずうぶんない。


本当ほんとうはペンでいてほしいけど、ないからゆびぶんいたつもりでおねがいします」

「「はい」」


 とまあこんなかんじですすめていく。


 文字もじそのものの紹介しょうかいわったら、きちゃわないように今度こんど数字すうじだ。


つぎ数字すうじってるとはおもうけど、おさらいね」

「「はーい」」

「1、2、3、4、5、6、7、8、9、0。それで9のつぎは10といて『じゅう』だよ」

「「ふーん」」

「10、11、12っていって18、19、つぎが20。21、22、29、30、おなじようにすすんで……」

「「うん」」

「98、99、100だね。101、102で109、110、111、112、というかんじ」

「「うんうん」」

数字すうじならべるのをけたといって、10から99が2けた、100が3けただね」

「「あ、うん」」

「1、10、100、1,000、10,000、100,000っておおきくなっていくの」

「ちょっとって、そんなおおきいかず使つかう?」

「え、ああ、使つかうこともある、かな?」

「そうなの?」


 どうだろう。前世ぜんせだと10まんくらいまでは、使つかった記憶きおくがある。

 国家こっか予算よさんとかのはなしになれば一兆ぐらいまでは使つかった。

 まあ10まんくらいでいいよね。


「1+1=2。1+2=3……」


 あとはざんざんだ。

 九九とおなじで、全部ぜんぶかずわせはおぼえてもらおう。

 これは絶対ぜったいやくつ。

 ざんひょうあと用意よういしよう。ざんは、無理むりだないまは。


 目標もくひょう簡単かんたんざんまでかな。

 本当ほんとう小数しょうすう分数ぶんすう確率かくりつ割合わりあい概数がいすうとかも勉強べんきょうしたいところ。

 かんがえてみると、いろいろあるよね。


 前世ぜんせはどうだったんだろう。女子高生じょしこうせいまでの記憶きおくはあるけれど、卒業そつぎょうした記憶きおくがない。



 予定よていをオーバーして、勉強会べんきょうかいだい盛況せいきょうだった。

 それから毎日まいにち夕食ゆうしょく時間じかんは、トエの計算けいさん教室きょうしつとなるのであった。

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