王女エマの諸国見聞録

やた

序章 旅立つ日

01 謁見室

 きらめくシャンデリアの光が、重厚な絨毯に映し出され、静寂な空気を満たしていた。エマは、背筋を伸ばし、父親である国王を正視する。国王の顔には、愛情と厳しさが入り混じっていた。


「エマ、お前ももう大人になった。女王になるための自覚をしっかりと持ち、この国を背負う覚悟ができているか?」


 国王の問いかけに、エマは静かに頷いた。幼い頃から女王になるための教育を受けてきた。その重責は、彼女を常に緊張させ、時に孤独にさせた。


「これからお前は、この国を出て、様々な国を巡る。他の国の文化に触れ、そして何より、自分自身を見つめる時間を持つのだ」


 国王は、手にした銀色の小箱をエマへと差し出した。それは、代々王家に受け継がれてきた、王家の秘宝。


「これは、お前が女王となるための証。そして、この旅のお守りだ。決して手放すな。代々、我々王家は、この旅を通して、世界の多様性を学び、自国を発展させてきた。お前もその伝統を受け継ぎ、新たな知見をこの国にもたらすのだ」


 エマは、銀色の小箱を受け取り、その重みを感じた。代々の女王たちが手にしたこの箱には、数えきれないほどの物語が刻まれている。


「父上、必ず、女王としてこの国を導きます。そして、この旅で得たものを、この国に還元します」


 エマの決意表明に、国王は満足そうに微笑んだ。そして、静かに告げる。


「行ってこい、エマ。そして、自分だけの道を見つけてくるのだ。お前が持ち帰る知見は、きっとこの国を新たな時代へと導くだろう」


 その言葉とともに、エマは謁見室を後にした。

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