6-3

「そそ、なんか当時の2年が一人もいなかったかららしいけどね。それ抜きでも実力あるし、誰も文句もなかったのはそうなんでしょうよ」


「え!安岐くんの部長のシナリオにそんな裏話があったの?これはメモらないと」


 2人の話を聞いた天は一瞬だけ顔をあげて、またスマホに集中する。そんな天の様子に2人は首を傾げた。


「天って、あの安岐葵に興味あったの?」


「さあ?聞いたことなかったけどね」



「失礼な。私だってある程度の知識は嗜むというか……」


「あんた自分の興味あること以外一切覚えてないでしょ」



 2人は呆れた様子で天を見る。そんな視線も気にせずに天は葵のことばかり考えてスマホをいじる。リッカとエマはそれを眺めつつ、ふと見られてる視線に気づくと天に声をかけた。


「ちょっと、天」


「待って、今いいとこ」


「天、早く顔を上げた方がいいよ」


「いや、もう少しだけっ」


 2人の声に返しつつ天はスマホに文字を打つことに勤しんでーー。



「赤音さん、こっち見てくれないなんて寂しいじゃないですか」


 聞き慣れた声に驚いて顔をあげた。

 そこには、微笑む葵が立っていて、天は思わず変な声を上げる。


「はうわっ!」


「あんた妖怪か」


「慌ててるねぇ」


 リッカとエマにつっこまれつつ、天は葵が何故自分のところにきたのか疑問で仕方がない。先程まであちらの陽キャの中にいたじゃないか!と。ほら、こっち見てる!視線が刺さる!


 葵が天のところにきたことで、クラスメイト達は注目していた。あの安岐葵が業務以外で自ら女子に声をかけにいくのは珍しいからだ。


 とくに天なんて、なんで?とみんなの頭に疑問符を浮かばせるような人物。いったいどんな関係なのだろうと探ってしまうのは仕方がない。


「安岐くん、あ、あの……何か用?」

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