口説かれた体験(カクコン10)



 現在、ひたすらカクコン10用の作品を書いています。

 時に疲労困憊し、なぜこんなことをしているのだろうかと、心からの疑問に打ちのめされてもいます。

 

 書いている作品は中華風後宮での恋愛物語です。


 じれじれとか、ドキドキとか、大人の男女間のそうした微熱というか、揺らぎを書いているようです(←もう、他人事)。理想と現実はまったく違うものだってことが、いつもにも増して多くなっています。


 例えばです。

 ドキドキするようなシチュエーションを書いたとします。それは描写の仕方によっては、完全に興醒めした場面になることもあって。作者のマスターベーション作品にならないようにしたいと思うのですが。


 もう少し詳しく説明しますと。

 ある同じ情景を描写したとします。

 書き方、見せ方によって、ポンコツ作品になるのか、もう一回読み直したいような作品になるのか、大きな差があります。

 



 さて、それは置いておいて。

 読み応えのある小説には二種類のパターンがあると思います。ドキドキハラハラした内容で、次はどうなるというストーリーを追う作品と、もう一つ、その場面場面の文章に酔える作品です。


 ミステリーなどのベストセラー作品、特に海外のSF作品やミステリ作品には、前者が多く。


 もう一回、読み直して物語に浸りたい作品には、例えばですが、最近なら蒼井ブルー氏とか、古くなら銀色夏生氏とか、後者の代表だと思います。

 彼らの作品は小説ではなく、詩のようなものですが。


 小説でも、村上春樹氏とか、他にもいらっしゃいますが。

 処女作「風の歌を聴け」なんて、まさにそういう作品だと思っています。


 私には描きたくても、残念ながら書けないですが。

 今回のカクコン10作品で、後者の作品に、なんとか近づけてみたいと思っています。これは時に危険なことで、ムードだけに流され、上滑りになると大失敗します。本当に難しい。



 さて、そこから、さらに大きな問題に気がつきました。

 恋愛物語を書く作者の根幹問題です。


 わたし自身、ドキドキの恋愛感情をもったのは、もうほんと、遠い遠い昔ですから(笑)。

 夫はとても優しくて大好きですが、何十年も夫婦をしていてドキドキしていたら笑えます。


 しかし、今は、そうした感情を思い出すしかありません。

 過去、自分が学校や会社で接した男性たちに、ドキドキしたときの状況など、どんなだったか。ひっしに脂汗を流しながら、思いだそう、なんてしているんですが。


 む、むずかしすぎる!!

 ドキドキ体験なんか、あったのか?


 わたしの作品を読んでくださった方々から、色気のある男性を描くのが上手いと言われることが多々あるのですが、そこはとっても嬉しいのですが。しかし……、そんな男性に出会い、リアルに経験することは実際は難しいと思います。


 顔がいいだけでもだめですし。

 知的なだけでも、

 優しいだけでも、それこそ魅力が足りない。


 どきどきって、どんな時にしたっけ?



 これは高校時代の思い出です。

 仲のいい男友達とかと話していても、それはあくまで友達であって、会話してもドキドキなど程遠い話でした。

 それは、ただ楽しいだけです。


 当時は電話が主流の時代でした。

 何時間も、どんな話をしていたか覚えていないのですが、ともかく、小説とか、星の話とか、SFとか、受験とか。

 いろんな話をする男友達で、話すのは、すごく楽しかった。彼氏ではないです。


 今でも名前を、なんとなく覚えています。


 なんでも言うことを聞いてくれる。

 でも、残念なことに、まったくドキドキしない。あくまでも男トモダチ。


 その人に、一度だけときめいたことがありました。


 修学旅行から帰ったあと、大学受験で忙しくなる時です。


 わたしがかわいいと思う「ぬいぐるみ」を、友人はお土産に買っていたんです。


「おお、かわいい。わたしにくれ!」っていったら。

「これが、最後だぞ」って、ぬいぐるみをプレゼントして、さっと怒ったように立ち去っていきました。


 その時にドキッとしたことを、今でも思いだします。そんな感情を思い出しては、小説の落とし込んでみたいものですが……、難しい。


 恋愛で夢中になっている友人や、好きな男性が別の女性とつきあって、激しく泣きじゃくる同級生とか、当時、かわいいとは思ったのですが、その感情が、困ったことに本当には理解できていなかったのです。


 残念ながら、若い頃から、自分のなかに少し冷えた感情があるのかもしれません。

 当時の親友もわたしと同じタイプで。ただ美人なだけによってくる男の人は多いのですが、彼女、男性が苦手でした。


 つきあってくれと告白されたはいいですが、手を握られたって、悲鳴をあげて、息もたえだえに逃げ帰ってくるような面白いやつで、おまけに傍迷惑というか、笑えるというか。


「断って! アメちゃん、あいつを断って」

「なんで、わたしが」

「いや、親友としての責任だ」

「そこ? そこに親友だすか!」


 こんな爆笑会話が多かったです。彼女がいれば、男など必要がなかったのかもしれません。


 そんな人も結婚したんですよね。

 ぜったい結婚できないって思っていたので、びっくりでした。

 まあ、ひと目を惹く美人だから、相手はいくらでも。あとは、ご本人の問題だけでした。

 

 いや、そこじゃない。


 わたしが描きたいのは、そういった女性じゃなくて、じれじれ、どきどきの方だ。繊細な情景、読んでいて、思わず大人の女性がキュンキュンするような。


 ……難しい!


 がんばります。

 カクコンまであと一ヶ月ほど。

 ああ、まだ、3万文字しか書けてない。本当に難しいです。「半魂」以上に苦労しそうな予感がしています。

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