流れとともに

第18話

月子は家に帰っても、なかなか寝つけずにいた。


初対面の人に、抱きしめられ…キスまで…。

こんなことは、初めてだった。


(私って、こんなに大胆だったんだ?)


考えれば考えるほど、自分がわからない。


だいたい、あの人は・・・どんな人なんだろう。


年はいくつぐらいなのか、もしかしたら、自分のほうが年上かもしれない。


背が高くて、多分180㎝は優に超えている。男らしく、しかも紳士的で優しかった。


彼女がいない訳はないし、きっととてもモテるのだろう。


私がなびいてしまったのはわかるけれど、あの人は、何故私を追って来てくれたのかな・・・ほんとうにわからない。


そんな事を考えているうちに、深い眠りに落ちていった。





次の日、めずらしく昼近くまで寝入ってしまった月子は、目が覚めるとゆっくりと風呂に入った。


髪を乾かしながら、彼にメールをするかどうか散々迷ったあげく、ドキドキしながら携帯を手にした。



「アサト様、昨晩は家まで送って頂き、ありがとうございました。

あなたは無事についたでしょうか?

浅井月子」


・・・送信・・・と、ボタンを押してから


(ちょっと、私、落ち着け!メールを送るの、少し、早すぎたんじゃないかな)


後悔しても、考えても、もう遅かった。


思い切ってお礼のつもりで送ってしまった。


自分の携帯電話番号も添えて。


またもや、普段の自分では考えられないような大胆な行動をとってしまった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


僕は彼女の家から30分ほどで自宅に到着すると、二時間ほど仮眠をとり、日課でもある朝のトレーニングを済ませた。

すがすがしい朝だった。


シャワーから出ると、個人用の携帯にメールが数件入っていた。


(おまえ、どこにいるんだ?)


親友で、仕事仲間であり、いつも夕食をとりながら飲む相手から。


(今夜、会いたかったのに、明日は時間ある?)


最近1、2回会った女性で着信履歴には優希とあるが…正直、顔が思い出せない。


最後は、月子からのメールだった。


(やった!)


僕は嬉しくなり、さっそく電話を入れてみる。


・・・呼び出し音のあと留守電に切り替わってしまった。


気を取り直してもう一度かけてみる。

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