第32話

「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました」






学校の屋上。

壊した錠と錆びた柵。

普通の空に、ボロボロな私。





「おじいさんは山へ、おばあさんは川へ行きました」








錆びた柵の上に腰掛け、ブラブラと足を揺らす。

濡れた髪は、風が吹いてもなびかない。

濡れて張り付いた制服が、私からどんどん体温を奪って行く。








「……おじいさんとおばあさんは、幸せに暮らしました」








放課後の学校。

運動部の声。

音楽部の声や音。

書道や茶道の、静謐(せいひつ)な空気。







「…………いいなぁ」







私は今日も、ぼんやりと1日を過ごした。

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