第13話

かなり戸惑ったが、ここはアパートで人の目もたくさんある。

仕方なく家に入れることにした。



おじゃまします、と言うと彼も入ってきた。




紅茶を入れて彼に出すと、彼はありがとう、とふんわり笑った。



できる限り離れた位置にソファに座ると、彼は少し複雑そうな顔をした。

そのまましばらく沈黙が続いた。



「あの…」



なんで、来たんですか?と言っていいのかわからず、口ごもる。

彼はそれを察したのか、あぁ、と口を開いた。



「昨日、つらくさせたみたいだったし、心配だったのもあるけど…。会いたかったから」



こんなイケメンにこう言われたら、世の女はトキメクかもしれない。

私は昨日の恐怖が残っていてトキメキなんて感じられなかったけれど。





その日から、彼は私の元をほぼ毎日訪ねてくるようになった。

午後8時。ふらりと訪れては、何をするわけでもなく、私が出した紅茶をゆっくり飲む。その間、私を見ていたりたまに撫でてきたり。



でも、帰る10分前には必ず私の首や胸元に顔を寄せ、甘い匂いがすると言われて抱きしめられた。



最初は怖かったけど、来るたびにされるその行為にだんだん慣れて来ると震えなくなった。

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