第11話
「ごめん、ちょっとだけ。我慢して?」
そう言って縁は私の胸元に顔を寄せた。
そのまま私の背に腕を回し、包むように抱きしめられる。
「……甘い匂いがする。香水…ではないね」
そう言えば、最初もそう言っていた。
甘い匂いがする、と。
しばらくそうしていると、縁が私から離れた。
「ごめん。止まんなくなりそうだから、そろそろ帰る」
もともと酔っていた上に泣きじゃくって疲れていた私は、ぼーっとしたまま縁を見つめた。
「あんま、そういう顔で見ないで。他のやつにも」
そう言って私の頭をぽんぽんと撫でると、玄関へ向かっていった。
「………ねぇ」
その声に顔を向けると、不安げな顔で私を見ていた。
「……また、会える?」
私は、曖昧に頷いた。
それを見て、ふわりと笑うと、彼はそのまま出て行った。
鍵を閉め、そのままシャワーを浴びた。
何度も何度も洗う。
肌があかぎれても、血が出ても擦り続けた。
恐怖を流したくて、触れられた感触を忘れたくて。
シャワーから上がった後は、ベッドに横になり、そのまま眠った。
幸い、今日は金曜日。
明日は休みだ。ゆっくり眠ろう。
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