第11話
あの日から、3日がすぎた。
開理から連絡が入った。
遺体が調べ終わったから、そろそろ埋葬するらしい。
最期に見にこないか?と。
私と幸架は、奏多(かなた)と凪流(なる)、悠(はるか)に連絡を取った。
たくさん接点があったわけではないが、あの3人にとっても大事な人だったはずだから。
佐藤悠として表社会に戻った、元記憶媒体欠陥個体である少女は、奏多と凪流に全てを打ち明けたらしい。
その話を聞いても、あの2人は笑って受け入れてくれたとか。
確かに佐藤悠は2人いて、本当の悠がもう1人の方だったのだとしても、その本人があなたを悠だというのなら。
あなたが悠なのだと。
そう言って笑ったと言う。
車を運転する幸架の横顔を見る。
私も幸架も、あの2人が死んでしまったとわかっているのに取り乱すことはなかった。
ただ、
あぁ、よかった
最後だけは、幸せになれたんだな
そう思った。
「あ、あそこにいるの、奏多さんと凪流さん、悠さんですよね?」
「ん?………あー、だな」
今日は会社から休みをもらったらしく、2人は私服だった。
幸架が道に車を横付けし、外に出た。
2人に何か話をすると、車のドアを開ける。
「お久しぶりです!往焚(ゆきや)さん」
「あー…。
私は相澤璃久(あいざわりく)。璃久でいーよ」
「璃久さんって言うんですか?可愛いー!!」
「凪流…お前、テンション高すぎだろ…」
「お邪魔します」
相変わらずなテンションの凪流に、頭を抱える奏多。
いつもらしい冷静な態度の悠。
思わずふっと笑うと、運転席に戻って来た幸架も笑った。
「発車しますね」
車が動き出す。
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