第3話
「彼と私とデスゲーム」は一応日本が舞台の学園乙女ゲームになっている。
日本が舞台なのに「隣国の王子」が金髪碧眼だったり、ヒロインの名前がエリアナだったり、私の役名もブラックローズだったり、まるで昭和の漫画のようなゆる設定だ。
そして第二ステージは都会の雑踏だ。
製作者は多分なにも考えていない。
「第二ステージの相手はコイツらだ!」海賊ウサギは雑踏の中で叫んだ。
もちろん道ゆく人は謎のマスコットキャラが日本語を話しても振り返ったりしない。
「お嬢、覚悟してください!」
いきなり交戦的なセリフを吐いたのはブラックローズの配下であるユダ子だ。
ユダ子はその名の通り、物語が進むとしっかり裏切る。そして製作者は相変わらず何も考えていない。
「ふむ」悟くんは何かを悟ったかのように言った。「ちょっとコンビニ行ってくる」
えええ、今対戦中なんですけれど。
「いいぜ」と海賊ウサギはまさかの許可を出す。
いいんかい。
「その間にユダ子のスパダリを決めてもらうぜ!」海賊ウサギは叫んだ。
なんだろう。スパダリがなんちゃらモンスター的な扱いに思えてきた。野生のスパダリとかいるのかなあ。
ルーレットが回ってユダ子はスパダリを決めた。
「ジャーン! ユダ子のスパダリは剛田君だぜ!」
私は海賊ウサギの叫び声を聞いて呆気に取られた。剛田君はほぼセリフのない野球部のモブキャラだからだ。
「これ、スパダリなの?」とユダ子はあからさまに不満げだ。
「俺、今部活中だからさっさと済ましてくれないかな」と剛田君も迷惑そうだ。
「さて対戦形式は」海賊ウサギはルーレットを回す。「ジャーン! フラッグ戦だ! それぞれの陣地にフラッグを立てて敵に奪われたら負けだ。妨害は何でもアリ。簡単だろう?」
普通フラッグ戦はサバイバルゲームなどで採用される大人数で対戦するゲームだ。一対一でするゲームではない。
「待たせたな」とそこへ悟くんが帰ってきた。「これ」
悟くんは唐揚げくんを私に渡した。いや、美味しいけど! 何故今?
「腹が減っては戦は出来ないからな」珍しくまともな事を悟くんは言った。まともで無いのはタイミングだ。
「さあ、はじめるぜ!」海賊ウサギは叫んだ。
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