第五章 黙示録
第五章 01 娘の遺骨
帰宅すると、真帆はリビングの飾り棚を見た。死産した娘の遺骨は、真帆が持っていた。仏壇は、ない。白いシルクの骨壺カバーに入れて、飾り棚に置いていた。真帆は、季節の花を供えて、朝晩、娘の骨壺に向かって、話し掛けていた。
離婚の際、岸田は、娘の遺骨を岸田家の墓に入れたがっていた。
まだ話し合いは、終わっていない。昨日もこの件で、岸田からメールが入っていた。
先延ばしにしていても、問題は、解決しない。真帆は、スマホを取り出すと、岸田に連絡した。
常々、自身の生活態度を改める必要があると感じていた。自身のⅠ型糖尿病も、岸田の助言通り、他大学派閥の病院で、検査を受ける予定だ。だが、湖香の死の解明に向けて、実践できていなかった。
真帆は、今日の午後に会った、沙月の様子も気に懸かっていた。
岸田に会うことになったら、守秘義務の範囲内で、沙月の話題に触れてみようと思った。
真帆は、動画配信サイトから『ジキル&ハイド』を検索した。何度か、映画化されている。一九九六年のジュリア・ロバーツ主演の映画を選択した。時間短縮のため、二倍速で再生する。
真帆は、『犯罪栄養論』の授業の中で、『赤ワインの合成成分でジキル&ハイド状態』というテーマを、何度か取り上げていた。興味を持つ学生も多かった。
この映画は何度も観たが、真帆は、観る度に新しい発見があると思っていた。
佳乃が、ジキル博士と同様、《解離性同一性障害》だったとしたら? その場合、責任能力が問われず、無罪になる可能性がある。
だが、狡賢い者なら、精神異常者の振りもできる。
真帆が考えを巡らせていると、スマホが鳴った。岸田からの返信メッセージだ。
真帆は、土曜日の午後、岸田小児科医院に行く運びとなった。
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