40 怖いんだけど……これ、ホラー映画ね?

「薄暗く光っているね」

「あれ寝ているのか? 現世で起きているのかと思ったぜ」

「この夢の星、いつもこのくらい暗いんだって。暗くて見えにくいから迷子になってるんじゃない? って話もあるらしい」


 タツロウはクルマを降下モードにし、夢の星への降下を始めた。


「それじゃ、行きますか」

「りょーかい!」

「どんな星かな? 楽しみだね!」


 夢羽はわくわくしている様子。


 どうやら地球型の夢の星のようで、重力もある。

 私達は、住宅街の中で1番高そうな3階建ての建物の屋根に着陸した。


「うわ……霞がかってるな」

「このせいで暗いって感じたのかな?」

「そうかもしれないね」


 私はレンタカーを待機モードにする。


 夜だが月の光が強く、懐中電灯などがいらないほど明るい。

 だが、霞がかっていてすごく視界が悪い。

 建物の屋根の上から辺りを見渡した。

 すると、


「……!!」


 私はすぐ、下から見えないように屈んで後ろに下がった。


「どうしたの?」

「誰かに見られている感じがする……今も……」


 誰もいないのに背後から視線を感じる。


「ちょっと場所移動しようかー」

「そうだね……何か忘れているわね……あ! タツローは!?」


 夢羽に言われ、周囲を見渡した。

 建物の屋上には、私と夢羽以外の人はいない。


「そういえば、降下中にもいなかった気がするわ」


 助手席に座っていたのに気づかなかった……。

 私達は建物の陰に隠れる。


「……うん。ここなら見られていない感じ。ありがと」

「うん、よかった」

「これって夢の主が見ているのかな?」


  私は銃を抜き、残弾を確認した。


「自分の夢を 俯瞰ふかんしているってことだよね。それだと陰に隠れたら見られていないってのもおかしいわね」

「あ、そうか……」


  遮蔽物しゃへいぶつに隠れても見られるけど、陰に隠れたら見られない……よくわからんな。


 私達は3階から1階に降り、外に出て住宅街の小道を警戒しながら歩く。

 ほとんどの家が暗くなっており、扉も固く閉ざされている感じがする。


 しばらく歩いていると、1軒だけ電気の点いている家を見つけた。


「主がいるかもだし、入ってみようか」

「りょーかい」


 私が先頭になり、正面の扉を開けて銃を構えて中へ入った。


「……おっけー。そっちは?」

「うん、こっちも何もいないよ」


 扉を開けると正面に2階への階段、両サイドに部屋がある、ホラー映画とかでよく出てくる外国の家によく似ている。

 私は入って右の部屋、夢羽は左側の部屋を確認した。

 この両サイドの部屋には明かりが灯っているが、2階は点いていない。


「2階も確認しよ」


 私はそう言って夢羽を見る。

 夢羽は頷き、後ろからついてきた。

 私はカバンからペンライトを2本取り出し、1本を夢羽へ、もう1本を左手で逆手に持ち、前方を照らしながら銃を構える。


 階段をゆっくり登り、上を警戒しながら登り切った。

 登り切った先もまた両サイドに扉があり、どちらも開きっぱなしになっていた。


「……」


 私はジェスチャーで、夢羽に右へ行くと伝えた。

 夢羽はそれを見て頷く。


 そのジェスチャー通りに右へ行き、夢羽は左へと入った。

 右側は大き目の寝室のようで、ベッドの下を照らしてみたが人影らしきものはなかった。

 次に開きっぱなしの窓が気になったので、それを確認しに近づいてみる。


「……いないね」


 窓の外の屋根の上に主が隠れているか確認したが、誰もいない。

 私はその窓を閉めた。


「夢羽、こっちには誰もいないよ。そっちはどう?」

「うん、こっちも誰も……危ない!」


 こっちの部屋に入ってきた夢羽が突然、私に向かって突進してきた。


「ぐは……」


 私は咄嗟の事だったので受け身を出来ず、そのまま床に倒れた。


 すると、私の上を何かがブンッと横切った。

 私は起き上がったのちに、何かを振った人物を見た。


 そこには、大きな鎌を持った全身を黒のローブで隠した長身の骸骨顔がいた。

 足元を見ると、ローブに似合わない革靴を履いている。


 天井にさっきは開いてなかった点検口が開いていた。

 たぶん、あそこから出てきたのだろう。


 私はその骸骨顔に向けて発砲する。


「!?」


 しかし、骸骨顔は銃弾を受けても怯むことなく、こちらにどんどん迫ってくる。


「やばい! 逃げるよ!」


 私は夢羽の手を引き、走り出す。


「なんなのあれ?」

「わからない。だけど、たぶんあれが行方不明者の局員が出た原因かも」


 私は背後に銃を撃ちながら扉を抜けて階段を駆け下りる。

 その銃弾も全て受けるがピクリともしない骸骨顔。

 すると、骸骨顔が持っている大きな鎌の形状が真っ直ぐになり、大きななたになった。


「怖いんだけど……これ、ホラー映画ね?」

「私も怖いよ。夢の主だったら怪我させるわけにもいかないけど、狙われている以上、もっと攻撃してもいいんだよね?」

「それはちょっと……。風羽、お腹ぎゅっとするよ」


 そう言い夢羽は、家から外に出た私を後ろからお腹を抱き、身体が浮いたかと思いきや物凄いスピードで飛び、骸骨顔から距離を離していった。


「ふー……何とかなったわね」

「夢羽、ありがとね。てか、私を抱えて飛べたんだ……」

「とても疲れるから、あまりやりたくないけどね」


 夢羽は離れた所で私を降ろし、一息ついた。


「ははは……それにしても追ってこないね」

「あー、たしかにそうね。何で追ってこないのかな?」

「さあ? あーでも視線は感じる」

「ってことは、追ってはきてないけど監視はしているってことかしらね?」

「たぶんそうかも。あ、感じなくなった」


 私は周囲を確認するが、さっきの骸骨顔はいない。


「いないうちに軽食とっておこう」

「うん、賛成!」


 夢羽が背負っているリュックの中から、おにぎりを2個取り出した。

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