07 ゲームの星
切手には、ワイヤレス式のゲームコントローラーが描かれていた。
「ゲーム? ……ああ、現世の娯楽の1つだな。子どもがよく遊ぶやつ」
「うん、まあ当たってる。大人もやるけどね」
「へえ……詳しいじゃないか」
「今はゲームもスポーツになっているくらいだからね」
私は近くに座れるブロックがあったので、それに腰掛けた。
「ふーん……それで、この星はゲームの内容が反映されているかもってことか?」
「たぶんね。さっきのやり取りも、ゲーム内でやった事あるイベントだったから」
「へえ……じゃあ、ここから先はどんな事が起きるってわかるのか?」
私は立ち上がり、路地を進む。
ゲンも後ろからついてきた。
「この先に警察署があるはずだから、もしかしたらそこに夢の主がいるかも」
「その内容に沿った夢かもってことだな。じゃあ、さっさと行くぜ」
私は自転車のゲンに乗り、路地を抜ける。
すると、
「……警察署?」
「いやどう見てもホテルだ」
「中に警察署があったりして」
「諦めろ。あれはホテルだ」
町中に、場違い感の出ているリゾートホテルがそびえ立っていた。
「とりあえず中に入ってみるぞ」
「うん」
ゲンは自転車のままホテルの正面玄関へ突っ込む。
自動ドアが開き、中へと入った。
「おー!!! 高級ホテルだ……」
1階フロアは広々としていて、高級感のあるシャンデリアまであった。
全体的にすごくキラキラしている。
「結構高いな……何階あるんだよ……」
ロボットの姿に戻ったゲンは、看板を見ながら唖然としている。
「20階もあるのか……部屋1つ1つ探すのは骨が折れそうだな……夢の主が勝手に出てこないかな?」
「ゲームだから出てくるんじゃないか? それに自分の夢の星だから、理由があってこの夢を見ているだろうしな」
「ん? 待って。夢の内容って自分で操作できるの? 夢は、脳が整理整頓をしているから見ている物って聞いたことあるよ」
「それは表面上の夢な。深層の夢が、夢の星の内容になる。その人が今抱えている問題が濃く出てくるのが、夢の星の内容だ」
ゲンは中央へと歩き始めた。
「引き
「さあな?」
中央部は草木に囲まれており、その真ん中に像が立っていた。
その上にシャンデリアがある。
像はただの像ではなく、中年の女の人が
「……これは見たことあるな。どこかに仕掛けがあるはず……」
「上に行く手段が無いからな。この像が怪しいよな」
ゲンは像の周りをうろうろする。
私は像から離れ、壁に何か書かれていないか探してみた。
「お? 像の後ろに何か書いてあるぞ」
「そうなの? 何書いてる?」
「んー……ふむふむ。草木に水を与えましょう……って書いてあるぜ」
「水が流れる仕組みがあるってことかな?」
私は像の周囲にある花壇を見て回る。
「あ! ここにも何か書いてある……えっと、太陽の光を当てよ……外の光は入ってこなさそうなんだけど……」
私は上を見る。
「シャンデリアかな?」
「それしかないな。スポットライトみたいなのがよくわからん所に当たってるから、これを動かせばいいんじゃね?」
「どうやって?」
「さあ? このゲームやってことあるんだろ?」
「色んなゲームが混ざっている気がする……私がやった事ない物もあるし、もしかしたら夢の主オリジナルかもしれないし、わからない」
私は再び壁の方へと進む。
「そうなんだな。まあ、夢だし混ざるよな」
ゲンも私の反対側の壁の方へと進む。
「あ! これだけ色が違う! ゲンの所にも、壁の色が違う所ない?」
ほとんどが茶色だが、1箇所だけ焦げ茶色になっていた。
押してみると、少しだけ動きカチという音が鳴ったが、何も起きなかった。
「あったぞ。焦げ茶だな」
「押し込めるみたいだけど、何も起きないんだよね。そっちはどう?」
「押せるな……何も起きないぜ」
私は右手を顎に添える。
「こういうのってっ同時に押すパターンが多いんだよね。ゲン、タイミングよく押してほしい」
「どうやるんだ?」
「いっせいのっせ! の『せ』で押して」
「あいよ」
私は焦げ茶色の壁に手を置く。
ゲンも同じように手を置いている。
「いっせいのっせ!」
壁を押し込む。
ゲンはタイミングが少し遅れたようで、私よりワンテンポ遅れて押し込んだ。
「難しいぞ!」
「落ち着いたらできるよ。もう1回やるよー。いっせいのっせ!」
今度は上手くいったようで、カチッという音が鳴り響いた。
キーという鉄が擦れる音が1階フロアに響き渡る。
そして、スポットライトが像の顔に当たった。
像は眩しいという仕草をし、水瓶を落とした。
落ちた水瓶はそのままホースが繋がったままになっていて、下に落ちずに浮いた状態になっている。
「水の流れが変わったぞ」
水が落ちている場所が変わったからか、花壇を囲むように水が流れ始めた。
すると、
「あ! 像が動いた! やっぱり下に階段があるパターンだ」
像の下に階段があり、覗いてみると奥にスイッチらしき物があった。
「押してくるよ。この身体だと壊れてもまた作れるからな」
そう言い、ゲンは階段を降りてスイッチを押した。
すると、地響きと共に、正面玄関の反対側の壁が開き、2階への階段が現れた。
「ゲンー。階段出てきたよー」
「お、当たりだったみたいだな。今行くぜ」
スイッチを押すと罠が発動する類の物ではなかったので、少しホッとした。
私達はそのまま2階へと上がる。
上がった先に大きな扉があり、開くとそこには長い食卓テーブルが部屋の中央に置かれていて、その周囲にはたくさんのイスが並べて置かれていた。
テーブルには火の灯っていないロウソク台と、花が飾られていた。
奥の方に2つ扉があるのが見える。
「狂人はいないぜ」
「ふう……このホテルにいないのかな?」
「いやいるだろ、どこかに」
「出てこないでくれ……銃なんて使ったことないんだよ……」
私は自動小銃を構えながら奥の扉に向かう。
「!! ムウ! 避けろ!」
「!!!?」
私は咄嗟に右に避ける。
すると、奥の扉が破られ、私の横を通過して飛んで行った。
「え? なに?」
扉があった所を見ると、頭が見えない巨体が見えた。
「うわ! あのでっかいの何!」
「いや知らん! 夢の主ではなさそうだ。武器を出して戦え!」
「嫌だよ! 逃げるよ!」
「待て!」
私は反対側の扉を開ける。
目の前に壁があり、左に廊下が伸びていた。
その廊下の右側だけに扉がたくさん並んでいて、1番近くの扉のノブを回したが、鍵がかかっていた。
巨体は見た目とは裏腹に足が速く、あっという間に距離を詰められた。
「ムウ!」
ドローンに変身したゲンが、ミニガンを撃ち放った。
「ぐおおおおお! ……人間……」
巨体は床に膝をつく。
他の鍵がかかっていると判断し、廊下を奥まで走った。
そして突き当たりの両側に扉が2つあったので、右に入った。
「はーっ……はーっ……はーっ」
入った所は物置のような小部屋になっていた。
私は息を整えながら部屋の角に身を隠す。
少し経ち、扉を勢いよく開けられた音が響く。
足音が遠ざかったと思いきや、また近づいてきて廊下に鈍い足音を響き渡らせる。
そして、
「……!」
扉の前で足音が止まった。
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