第2話-②

本格的な夏が始まった。

太陽はジリジリと暑い日差しを放ち、蝉は元気よく啼く。そんな暑い夏が始まった。

学校の教室のクーラーはあまり効かず、皆うちわや下敷きで自身に風を送る。

暑すぎて、じんわりと身体が汗ばむ。


「…あっつー」


俺は自分の机の上に身体をピトッとくっつける。

机の上がひんやりと少し冷たく、幾分かマシになる。


「かーじの!」


自分の名前を呼ばれ、ひんやりとした机から顔を上げる。数人のクラスメイトが俺に声をかけ近寄ってくる。


「なに〜?」


「なあなあ!中学の時バスケ部ってまじ?」


「なんで」


「この間の体育でバスケした時お前、絶対経験者だって思ってお前と同中の奴に聞いたらバスケ部だったって!今からでも部活入んねー?」


「入らない」


「何でだよー梶野かじの〜」


最近はこうやって真雪まゆき以外のクラスメイトとも仲良くなり話すようになった。

こうやって度々部活の勧誘を受ける。

中学の頃は色々とスポーツをしていたが膝を壊してからは運動はめっきりしていない。

クラスメイトにうざい絡みをされながら俺は「入りませーん」適当に話を流していた。

すると、教室の扉から涼しい顔をして真雪まゆきが入って来るのが見えた。


「はよ〜真雪まゆき


いつも通りに声をかける。


「お…おはよ」


「なあ 彼方おちかた梶野かじのの事説得してくれよ〜!こいつ絶対めちゃくちゃバスケ上手い奴なんだよ〜!俺は分かるんだ〜!」


「え?」


真雪まゆきに突っかかるクラスメイト。

急に話しかけられ、戸惑う真雪まゆき


「入らねーって言ってんだろ 散った散った〜!」


俺はしっしっと払うように手を振りクラスメイトを追い払う。


梶野かじのくん、バスケしてたの?」


「中学の頃な」


「へぇ、バスケだけ?」


「あー、小学生の時はサッカーと陸上、中学でバスケって感じ」


「高校ではしないの?」


「もういいかな」


「ふーん。だから身長も身体大きいんだね」


「…大きいか?」


まあ確かに身長は178cmで180cm近いが、そこまで凄くでかい訳でもない…と思う。

1年の時は俺の隣に180cm超えの忠治ただはるがいたからでかいと感じていなかった。

まあ、真雪まゆきからしたらでかいのか…。


「大きいよ…それ本気?」


真雪まゆきはムッとした顔をして言う。

確かに真雪まゆきは細くて身長も170cmちょっとくらいで俺の体格とは真反対だ。


「え…」


「いいなぁ、俺もスポーツしとけば良かった」


真雪まゆきはどうやら自分の体格がコンプレックスのようだ。

少しいじける真雪まゆきが見ていて可愛くて俺は自然と顔が緩んだ。

あれから真雪まゆきの体調は復活して学校を休むことなく一学期が終わろうとしていた。


「そういや、夏休みはなんか予定あんの?」


俺が思い出したように聞く。


「バイト、バイト漬け。夏休みが一番稼ぎ時だから」


「あー、そっかそうだよなー」


俺は去年の事を思い出す。冬にバイトしていた居酒屋が潰れ、次のバイト先を探そう探そうとしている間に高校二年になり、もう夏を迎えようとしていた。


「俺もバイト探さなきゃなー」


「バイト探してるの?」


「去年の冬にバイトしてた居酒屋が潰れて、次探さなきゃと思いながらづるづる…」


「あー、そういう事 何処の居酒屋でバイトしての?」


「駅前の居酒屋!」


「ぁ、確かに潰れてたね。居酒屋かー…」


真雪まゆきは何かを考え始めた。


「あ!俺のバイト先の近くの居酒屋スタッフ募集してたよ、行ってみたら?」

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