静かな夜。終電間際のホームには誰もいない。

わたしひとり。

もういいや。

全てを捨てて楽になろう。

ただ一歩踏み出すだけで、私は…


その瞬間 思いっきり後ろに引っ張られた。

自分の左腕が痛い。


私の目の前を通り過ぎていく電車。

あぁ、行っちゃった と心の中で呟く。


顔を上げるとうっすら汗をかいていて、慌てたような様子の男の人がいた。

私の左腕を掴んで後ろに引っ張ったのはこの人だ。


「はぁ…何してんすか!」


男の人は私に向かって声を荒らげる。


「……………」


答えない私に彼は


「…はぁ…もう…」


俯きながらため息をつく。


これが私と慎太郎さんとの出会い。

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