「なあー」


「んー」



寒い冬の教室。

セーターから覗かせる細くて白い手。


律の細くて白い手は、紙を捲るのを辞めない。


向かい合わせに並べた机。

俺はちらっと律を見る。


「律が貸してくれたこの本さー、」


「……うん」


「話暗くて読む気しないわー」


「……………」


「もっと明るい本読んだ方がいいよー」


俺が話しをしても一向に本から目を離す気配のない律。


そんな律が読んでいる本のタイトルは



【同罪】



これまた暗い内容だと予測がつく。



「……なぁ、なんで暗い本ばかり読むの」



その言葉と共に律は本から目を離し、俺を視界に入れる。



「……なんでだと思う?」



そう言って笑って、律はまた視線を本に戻す。



本当にこいつは変わってる。

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