六花の薔薇

リデルガ㉑

コンコン

「真理愛（まりあ）」

部屋の扉をノックをする音が聞こえる。

この時間に来るのは彼しかいない。

ガチャ

勝手に開く扉、まだ返事してないのに…

「大丈夫？」

「…壱夜（いちや）」

「落ち込んでんだろーなって思って」

「…別に落ち込んではないもーん」

壱夜（いちや）はベットに座る真理愛（まりあ）の横に座る。

「その割には最近トイレまで翼のこと追いかけていってんじゃん」

「…いや、だって…」

「やっぱり気にしてるんじゃん」

「ん～」

「翼（つばさ）だって【リデルガ】に来たんだから時期人間の匂いも消えるし、大丈夫だよ」

「…でも、翼（つばさ）ちゃんはダンピールだし。いつどこで何に狙われるか…」

「その為に俺達もいる。だからひとりで背負わなくていい、なっ？」

そういって壱夜（いちや）は真理愛（まりあ）を抱きしめる。大きな身体が真理愛（まりあ）を包み込む。そして真理愛（まりあ）の額と壱夜（いちや）の額がくっつく。

「真理愛（まりあ）はよくやってるよ、大丈夫」

落ち着いた声でいう壱夜（いちや）のいつもと違う雰囲気に真理愛（まりあ）は少しドキドキする。壱夜（いちや）はいつも真理愛（まりあ）を肯定してくれる。その接し方は真理愛（まりあ）にとっては居心地のいいものだが、甘やかされている自覚もあった。

「…うん、ありがと…」

「おう！」

そういって笑う壱夜（いちや）。

無邪気な笑顔に胸が苦しくなる。

－ごめんね、私ってずるいね

もう何回心の中で謝っただろう。

真理愛の中でどんどん罪悪感が募っていく。

壱夜といるのに違う人の顔が浮かんでしまう。

そんな自分が憎らしい。

－私の心はいつ諦めがつくんだろう。