リデルガ⑱

「っっ!」


【リデルガ】に来て、毎日夢を見る。

最後の母親の言葉。気づいたら突っ伏したまま寝ていたのだ。寝汗を掻いて目が覚めた。

時計を見ると夜中の2:30を指している。変な体勢で寝ていたせいか身体も頭も痛い。


「…最悪…今日も、眠れない…」


つばさは椅子から立ち上がりカーディガンを手に取っていつもの場所に向かう。

広い廊下を通って階段を下り、大きなガラス張りの扉を開ける。

その瞬間、サアーっと風が花の香りを運んでくる。


そこは鋳薔薇いばら家の大きな庭園。

薔薇の花が綺麗に咲き乱れる。

月夜に照らされ薔薇が輝く。

まるで宝石のように…。


ここはつばさが眠れなくて屋敷中を歩いていて見つけた場所。眠れない夜はいつも庭へ続く階段にに座って、月を眺めるのが日課になっていた。



「…………」


環境が大きく変わり分からないことばかりで頭が追い付かない日々。

母の言葉もここに連れて来られた意味も…。


「11回目」


静寂を遮って後ろから声がする。


「……御影みかげ


そこには月明かりに照らさた御影みかげの姿があった。


つばさがここに来るの。眠れないの?」


御影みかげはそういってつばさの隣に腰を折ろす。


「…うん」


「…そう」


二人の間に沈黙が流れる。


御影みかげも月を眺める、その横顔がとても綺麗だった。


「母親のせい?」


唐突に聞かれた言葉。


「…ぇ?」


「最後の言葉、つばさかなり困惑してたから」


『…私のこと邪魔だったんじゃないの?産まなきゃよかったってそう思ってたじゃなかったの?ねえ、お母さん!!』


あの日の自分の言葉が蘇る。


「あんなこと言うなんて思ってなくて……」


物心ついた時にはもう母の笑顔は思い出せなかった。ずっと怒って、厳しくて疎ましいんだとつばさはずっと思ってた。

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