リアゾン⑨
頭がボーッとする。瞼が重たい。
何か夢を見ていたような気がするけど何も思い出せないでいた。
身体が一定のリズムで揺れる。
何か乗り物に乗っているかのよう…
その
「お目覚めですか?」
その声に振り返ると【リデルガ】の住人である
どうやら
周りを見渡すと車の中だった。
どうやら車でどこかに向かっている最中のようだ。窓の外に目をやると移りゆく景色は何処か見覚えのある場所ばかりだった。
「…家…?」
窓の外の景色は
「君の家に向かっています。」
「なんで…」
「記憶を消すため」
「…記憶、誰の…」
「君の母親の…」
「どうして…」
「君はこれから【リデルガ】で生活をしてもらうつもりだからかな」
サラッと衝撃的なことを言う
ダンピールだとバレればきっと自分は【リアゾン】の国のトップに殺されるか何かしらの罰はあるかもしれないという想像は出来た。
でも【リデルガ】で暮らすという想像はこれぽっちもしていなかった。
「なんで、私が【リデルガ】に行かなきゃならないの…」
「このまま【リアゾン】にいる方が危険だから」
いつ人を襲うかも分からない化け物を人間の傍に置いておくことは出来ない。
でもそれが母親の記憶を消したり【リデルガ】で暮らす事になったりどうも頭が混乱して理解が追いつかない。
「…記憶…。記憶って何の記憶を消すの?」
「母親の中にある君の記憶を全て消す」
その言葉を聞いて
そんな母親から
何かが変わる?
-私からお母さんを解放してあげれる?
「何も言わないんだね。君との思い出も全部消えるんだよ」
「…うん」
「君は母親の中でそもそも゛いなかった゛事になる」
「…それが1番いいのかもしれない」
消え入りそうな
そこから先は家に着くまでの間、車内は物凄く静かだった。誰も何も一言も発さない。
車内にはエンジンの音だけが響いた。
これでやっと母親を解放してあげれる。
私から逃がしてあげられる。
元々、学校を卒業したら翼に自由はなかった。
年々増える吸血衝動…もう自分で抑えるには限界だった。
きっとお互いにだいぶ前から疲弊していた。
いつまで続くかも分からない吸血衝動を抑えるために暴れる娘を押さえつけ泣きじゃくる娘に『我慢なさい!』としか言えない地獄のような場面にもうお互いにいっそ死んでしまった方が楽なのではないかとすら思っていた。
高校を卒業したら、母は私を部屋に軟禁するつもりだったし私は私でもうこの世を去るつもりでいた。もう疲れきっていた。
【リデルガ】に行って何をされるか分からない。でも、いつ人を襲うかも分からない化け物の娘なんていない方がいいに決まっているのは確かだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます