リアゾン⑤
「…おぇ…はぁ…はぁ…うっ」
出てくるのは透明な唾液だけ。
幸い授業中だから、誰もいない。
思いっきり吐く事が出来るが、身体の熱は治まらない。身体の内側から血を欲しているのが分かる。自分の身体を両手抱きしめるがガタガタと震えて止まらない。
この状況に勝手に溢れてくる涙。
-なんで、私なの…なんで
「…もう…嫌だ…」
気づいたら言葉を呟いていた。
コンコン
その時個室のドアがノックされた。
その音に
身体に一気に緊張感が巡る。
「…大丈夫ですか?」
遠慮がちに放たれた言葉は青年の声だった。
-男…?
「…開けてくれますか?」
その声にハッとする。
-この声…もしかして、さっきの…
落ち着いた透き通るような声。
優しい声色とは裏腹に直感的に怖いと感じてしまう。
「別に苦しいのはあなただから、開けてくれなくてもいいですけど…早く楽になりたくないですか?」
-楽に…なれる?
もう何もかも限界だった。
血を欲してしまう自分も、我慢して苦しくなって暴れてしまいそうになる自分も…。
何度も何度も頭の中で人を襲った。
首元に牙を突き立てれたらどんなに良いだろう。
こんな衝動からも解放される?
「このままではあなた、人を襲いますよ?」
その言葉に胸がズキっと疼いた。
人を襲ってしまうかもしれない…?
「………っ」
震える手をどうにか抑え、ゆっくり扉の鍵を開けた。
カチャ…
ゆっくりと個室の扉が開かれる。
眩しくて目を細める
そこには金髪の髪が光に照らされ揺れる。
「…凄い、苦しそう」
「……っ、」
「彼女の匂い濃かったもんね。可哀想に…」
彼はずっと笑みを浮かべこの状況を楽しんでいるかのようだった。
そして、
そして
突然の事で
-…ぇ
「飲んで、じゃないと苦しいままだ…」
その言葉で意味は分かった。
噛めと彼は言っているのだろう。
このまま彼を噛めば
こんな状況になっても
「このままだと君は友達を傷つけるよ、それでもいいの?」
頭の中で浮かんだのは
可愛らしい笑顔でいつも名前を呼んでくれる彼女…。
-でも…でも…
それでも
彼は自分で自分の手首を噛んでいたのだ。
そこから溢れ流れる赤い血。
その匂いに頭がクラクラする。
「まだ、我慢するか?僕はヴァンパイアだ、か弱い人間とは違う。簡単に死んだりしない…」
溢れ出る涙。
彼の真剣な瞳が
その瞬間、
ガリっ
勢いよく彼の首元にかぶりつく。
無我夢中で彼の血を吸った。
溢れ出る涙を無視して…。
-あぁ…やっぱり私は…
「…見付けた。゛ダンピール゛」
その言葉を耳にして涙が余計に溢れる。
-どうして、私を生んだの…?
-ねえ…お母さん…
私はヴァンパイアと人間の間の子
゛ダンピール゛だ。
「…ごくっ」
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