長い夢

湖ノ上茶屋(コノウエサヤ)

第1話


 ――いつまでクヨクヨしているんだか。

 わたしはあなたを見て微笑む。

 ずっとそばにいるんだけどな。いつになったら気づいてくれるかな。気づいたら、〝気持ち悪い〟とでも思われちゃうのかな。それなら気づかれないほうがいいのかな。

 ――あなたが空と共に泣くのなら、わたしが空を枯らしましょう。そうすれば、あなたは泣けなくなるでしょう?

 雲は風に流されて、どこかへ消えた。

 太陽が喜びを爆発させるように、さんさんと輝く。

 ――ほら、笑って。もう、共に泣くものはいないんだから。

 言いながら、わたしは気づく。

 わたしの心は震えて泣いて、あなたに縋ろうとしていることに気づく。

 ああ、もう、誰もが幸せではないと思えるような、絶望の時間を終わらせよう。

 共にいられたひと時は、長い長い夢だと思おう。

 目を覚ませ。

 どこか違う場所へ行こう。

 わたしはまた、あなたを置いて、どこかへ行くよ。

 追いかけては来られないほど、どこか遠くへ、わたしは行くよ。

 もしもまた、あなたに会えたその時は、世界を水没させるほど、涙を流して笑いましょう。



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