第2話 記憶を辿る(前書きにかえて)

「檻の中の少女」 ~ 幼き日の記憶


◆記憶を辿る(前書きにかえて)


 幼い頃の思い出って、記憶があやふやなところがありませんか?

 それが本当にあった出来事なのか、それとも、他の記憶と混ざり合って、勝手に本当の出来事だと思い込んでいるのか?


 僕にもそんな思い出があります。

 数ある思い出の中で、あれは本当にあった出来事なのか? それとも何かの出来事を夢で見ることにより、勝手に自分の思い出として置き換えているのではないか? そんな思い出があります。

 けれど、それが本当にあった事なのか、確かめようもありません。

 誰かに訊こうにも、その当時の人の記憶も定かではないし、まともな話であれば聞いてくれるかもしれませんが、突拍子もない話でしたら、誰も聞いてくれはしないでしょう。


 そんな不明瞭な記憶の中でも、特に印象に残っている思い出があります。

 それは、ある場所とそこにいた人間たちのことです。

 人間たち・・それは子供でした。

 子供たちは、ある小屋・・「檻」のような所で飼われていました。


 ・・人間を檻の中で飼う?

 そんなこと、絶対にあり得ない。

 誰もがそう言うと思います。

 実際はそうではなく、子供たちは他の事情で檻の中にいたのかもしれませんが、幼少期の僕にはそう見えたのです。

 この檻のあった場所の夢を数十年に亘って、何度も繰り返して見ます。

 よほど印象深い出来事だったのでしょう。

 夢の中で僕は檻の中にいる子供たちに声をかけられます。

 ある子は、「助けて、ここから出して」と言っています。

 また他の子は、「学校に行きたい」と願っています。

 子供たちは救いを求めていますが、幼かった僕にはどうすることもできませんでした。


 絶対にこんなことはあり得ないと思っていても、何度も夢に見ますし、その場所も子供たちの顔も鮮明に憶えています。

「これはきっと幻の記憶だ」

 そう思っても、そこにいたある少女の顔が浮かび、彼女の燃えるような瞳が目の前にいるように見えます。

 少女と交わした僅かな会話もずっと耳に残っています。

 ですが、その少女が本当にいたかどうか、今となっては知ることができません。

 あまりにも遠い思い出です。


 ですから、これから話す僕の思い出話は、話半分で読んで頂いてかまいません。

 読みながら、「それはききょうさんの夢だよ」と笑ってください。

 そして・・

 この話の中では一般的な倫理観など一切ないことご了承ください。

 全ては薄ぼんやりした記憶の中の出来事です。


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