響野 馨と薫 響の入れ替わりラブスクランブル!
奏
零、プロローグ
プロローグ
ここは現代日本のような、異世界、中世、ヨーロッパのような、そんな不思議な世界。
人間もいる。
亜人もいる。
妖精もいる。
精霊もいる。
魔物もいる。
悪魔がいる。
魔族もいる。
全てが平等に存在している世界。
地上に存在しないのは、光に属する神々だけだった。
この世界を統べているのは、絶大な力を誇る妖精族と同じく、強大な力を有する魔族だった。
抽象的だが魔族は現実面を統べて、妖精族は自然界を支配する。
どちらが欠けても成り立たない世界の成り立ち。
そういったあやかし、または魔物、または精霊や妖精と言ったような人外の存在が通う学校、春日野高校。
その2年A組に属するのが魔族を統べる王子、響野 馨だった。
ルックスはずば抜けて美しくその力や自信に裏打ちされた堂々とした態度。
彼に憧れるものは、後を絶たないが、彼自身は、まだ恋愛を知らなかった。
同じ春日野校内中等部に水の妖精王の王子という肩書きで、薫 響が在籍していた。
馨は17歳だが、響は15歳。
後半年もすれば高校一年生だ。
この頃、ふたりはお互いのことをなにも知らなかった。
白くなる季節は奇跡を呼ぶのか、ふたりの身に思いがけない事態が降りかかるのは、学校中がクリスマスパーティーに浮かれている夜のことだった。
「クリスマスパーティーだからといって、みんな浮かれすぎだ」
そんなことを呟きながら、馨はクリスマス会場の周辺を巡回していた。
この時期になると、カップルの成立も多く、問題事が多発する時期なのである。
生徒会長なんてやっている馨からしてみれば、この時期は、多忙な上に頭が痛いだけの困った季節だった。
「まあまあそう言わないで、馨ちゃん」
馴れ馴れしくそう声をかけてくるのは、響野家の分家筆頭にして、馨の片腕である東堂和穂だ。
チャラチャラしたナンパ男に見えがちだが、鬼らしく怒らせたら怖い男だったりした。
「今日みたいな日ってさ。違う意味で問題が多いから、一応ぼくらは気を配っていないとさ。生徒会としては」
和穂がそう言った途端だった。
すすり泣くような声が聞こえたのは。
首を傾げながら木の裏に回り込むと、中学生くらいの男の子が、木の幹に座り込んで泣いていた。
いつもなら構っていられるかとばかりに無視する馨だが、このときばかりは無視できなかった。
思わず片手を伸ばす。
「どうした? 何故泣いている? もうすぐダンスパーティの時間だぞ? 踊らないのか?」
「ボクは出来損ないだから、入っちゃダメなんだって」
泣きながら説明され、馨は憤る。
「出来損ないなんて言われて、お前は引き下がるのか?」
「だってボクは出来損ないの妖精だから」
「妖精だって?」
「うわ。拙いの拾っちゃったね、馨ちゃん」
魔族特に鬼にとって妖精は天敵である。
その力の強大さ故に天敵なのである。
それが出来損ない?
カッとなった馨は、気がついたら少年の腕を掴んで立たせていた。
途端飛び込んでくる少年の容貌。
白い肌。
黄金色の髪。
深緑の瞳。
ハッと息を飲むほどに美しいその顔立ち。
妖精でしかあり得ないその容貌。
体勢が悪かったのだ。
馨は相手の少年を立たせようとして前屈みになっていた。
少年は泣いていたせいか、体から力が抜けていて、引かれるままに、体が勢いよく馨に向かってくる。
ウワッと思ったときには、ふたりはキスしていた。
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