見える男

天川裕司

見える男

タイトル:見える男


ずっとパソコン作業。

私の仕事はシナリオライター。

カタカタカタカタ…(パソコン打つ打つ音)


「……ふう〜疲れたなぁ…」

一人暮らしを始めて、もうずっとこの仕事。

私の書いてるものはホラーサスペンス物で、

とにかくリアリティを追求したものを

毎日書こうとしている。


今回もとりあえず良いネタを見つけたから、

それを元にずっと書き進めていた。

でもさすがにパソコン画面と

ずっと向き合っている生活は疲れる。


「ちょっと休憩」

コーヒーを淹れ直し、部屋の空気も入れ替えようと

窓の所へ行く。すると…


「……」

ちょうど家の前の道に、

男が笑顔で立ってこっちを見ていた。

ちょっとギョッとして、カーテンを一旦閉めた。

やっぱりなんとなく気になってまたカーテンを開け、

前の道を覗いてみる。


「…居ない?」

どこかへ行ったのだろうか?消えていた。

でも変だ。

前の道路はこの部屋から見晴らしが良い。

物陰に隠れる所なんて1つも無い。

カーテンを閉めて開けるまで数秒。

この数秒のうちに

どこかへ消えるなんてあるだろうか。


していると…

ドアを叩く音「ドンドンドン!」

「えっ…?!」

急に部屋のドアを叩いてきた。

「ちょ、ちょっと…何なの…」


これにはさすがに恐怖した私。

いくらホラーサスペンス物を書いてるからと言って、

実際そんな現象に遭えば誰でも怯むだろう。


でも「これももしかするとネタになるかも…」

と私はライター根性を焚き付かせ、

玄関のドアをバッと開けてみた。

「……」やっぱり誰も居ない。


人の気配がしなかったので

こんな事しちゃ居られないと

私はまたパソコンへ向かう。

でもその時また急にビデオ電話が画面一杯に映り、

「ひゃっ!」

さっきの男が同じように笑顔でこっちを見ていた。


「な、何なのよこれ…」

あまりの恐怖に出会うと

それを凌駕する心に出会うのか。

逆に落ち着きを取り戻し、日常に返ろうとする。


そして喉も渇いていたので、

やっぱり私は冷蔵庫へ向かい、

アイスキャンデーでもペロペロ

舐めながら仕事しようとした。


そして冷凍庫を開けていつもの見慣れた顔を見ながら

「もうちょっと慣れなきゃいけないわね、私」

リアリティそのものを描く作家として、

私はもう少し自身の成長が必要だと感じていたのだ。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=r03QWsI12ts

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見える男 天川裕司 @tenkawayuji

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