チャットで知り合った私たちは恋をする。

@tomorin0117

第1話

桜の花弁が芽吹き始める3月の下旬。高校に入学するまでの短い春休みの期間。


(来てるかな……?)


篠崎亜弥は自室にて、パソコンを起動させ、普段から利用しているサイトにアクセスする。


(あ、いる!)


専用のIDとパスワードを入力。個人用のページにアクセスすると、私が部屋に入ってから、数分後に知り合いが入室する。


『久しぶり。忙しかった?』

『はい。昨日までは』

『今日は暇なんだ』

『そうですね。今日は何もないです』


SNSが進歩した現代社会の中で、ネットでのやり取りは活発で、私が普段から通っているチャットサイトは若い世代の子が多く利用しているらしい。


『そっちはどうですか?』

『こっちは普通。親は仕事でいないし、自分の時間を過ごせてるって感じ』


私とやり取りを交わしている人物は私と同じ中学生みたいで、私が利用する前から使っていたみたいで、ネットの知識は豊富。


『アヤは友達が多いイメージ』

『私はそんなにいないですよ。子供っぽいって思われてるみたいで』

『わかる』


周囲からは子供っぽいとみられており、友達の数としてはそんなに多くない。


『春から高校生ですね』

『そうだな』

『ミナさんとしてはそんなに楽しみではないと?』

『楽しみではあるんだけどさ……アヤと同じ高校になるとは思わなかったから』


私たちは高校の話をすることはあまりなく、お互いの進路を知ったのは、高校の受験が終わってから。


『私は嬉しかったですよ』

『アヤはそうだよね。ボクは複雑だったよ』


ミナさんは私とリアルで会うことを避けている。


『直接、話したいです』

『ボクが男だったらどうする?』


ミナさんからの問いに私は少しの間、考えてから返信する。


『男性でもいいです』

『アヤってさ……本当に裏表がないよね。思ったことをそのまま伝えるタイプ』


友達からよくいわれてます。


『ボクの容姿をみても驚かない?』

『驚かないです』

『何で断言できるの?』

『私の容姿、高校生になるのに小柄なんですよ!! 定期券を買う際に中学生なのに、小学生っていわれましたから』


あの時の駅員さんの『あ、この子中学生なんだ』反応は心に刺さり、少しの間、人間不信になりました。


『それに私は外見で判断しませんから』

『……素直すぎ……。ボクと知り合ってなかったらと思うとゾッとする』


パソコンの画面に時間で消滅する形式でラインのIDが表示される。


『覚えて』

『わ、わかりました』


消える前にラインのIDを記録してから、表示されたIDにラインを送る。


『じゃあ……明日の午前中に駅前で』

『はい! 待ってますね』


私たちは待ち合わせの時間と場所を決めてから、その後は雑談を交わした。

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