page,1 情報整理

1話から早速説明回です。多分、次話の途中まで続くかも。

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 異世界に転生を果たした俺は、ビシュトが脳に直接ぶち込んできた、膨大な量の情報を整理していた。


「あいつ、最後の最後にやり返してきたからな」


 転生直前に「午後ティーの恨みー!」とか叫びながら、無許可で俺の脳にすごい勢いで情報を送り込んできたビシュトの顔を思い出す。

 めちゃ痛かったからな。今度会ったら、午後ティー五本ぐらい貰お。


「そんな事より、ねー。なかなか面白そうじゃん」


 俺が、異世界に転生するにあたって、ビシュトから条件が何個か提示された。条件は、丁寧にも紙に箇条書きにされており、一番下にサインを書くという徹底ぶりだった。

 

 その、条件というのはこれだ。





 

        異世界への転生条件


   ・三年後に覚醒する勇者を一人前に育て上げ、魔王討伐を成功させること

 

   ・人々の英雄となること

 

   ・命を賭して世界を変革へと導くこと

          

   ・以上の条件を絶対に遵守し、成功させること


   ・異世界を楽しみましょう!

       


   上記の内容を承諾し、異世界への転生を希望します。

                         Sign___________     





 こんな契約書みたいなの書かなくても、別に変なことしないのに……。

 ビシュトが言うには、世界を渡るにはちゃんとした手続きが必要らしい。

 あいつも何かの書類にサインしてたし、神様も律儀だねー。


「そういえば、ビシュトがなんか言ってたような………」


 転生前に、ビシュトが言っていた言葉を記憶から探る。

 ビシュトに情報をぶち込まれたせいで、それより前の記憶が思い出しにくくなっている。


 その後、十分ほど記憶と格闘したが思い出すことができず、諦めて情報にあった近くの町へと向かい始めた。


「まあ、いいや。いつか思い出すでしょう!」


 





 それを思い出したのは、転生から2日目の朝だった。

 俺は、昨日の夕方に到着した小さな村にある、宿屋の一室で目を覚ました。

 ここに来る途中に見つけた、鶏みたいな動物を肉屋で売ったら3泊ぐらいはできる値段になったので、宿賃の心配はない。


「あ!そうだそうだ、思い出した。"神の代行者ビシュアジェント"だ!」


『お呼びでしょうか、アオヤマ様』


 突然、俺の脳内に声が聞こえる。

 この声は、俺が今呼び出した"神の代行者"のものだ。

 "神の代行者"というのは、ビシュトの配下であり、この世界の監視が主な仕事だそうだ。


「あぁ、お呼びだ。早速質問なんだが、お前はビシュトになんと命令されている?」


『アオキ様のサポートを行え、と主様には命令されております』


「なるほど」


 サポートと言うのは噓ではないが、俺の監視……いや、観察が本当の目的ってとこか。

 まあ、変なことするつもりもないし、好きなだけ見てもらってもいいけどな。


「オッケー。じゃあ次に、今の俺のステータスを見せてくれ」

 

『わかりました。…………こちらです』


そう俺が頼むと、二秒後には脳内にステータスらしきものが出てきた。




ステータス

名前:蒼樹桃李

種族:人族

加護:主神の加護

称号:転生者 神の使徒 英雄の卵

能力:ユニーク… なし

   レア … なし

   コモン… なし

   技… なし

潜在:ユニーク【導者】【英雄】【救世】

   コモン【剣術】【体術】【身体強化】【属性付与】【魔力操作】

その他:神の代行者   




 脳内に映し出されたステータスは、突っ込みどころが多い……いや、多すぎだろ!

 これ、どこから手を付ければいいんだ?

 うーん……よし、それじゃあ、上から順に見ていこう。


「"神の代行者"……うーん、呼びにくいからジェントでいい?」


『ご自由になさってください』


 よかった、少し安直すぎたかと思ったけど特にネーミングに不満はなさそうだ。

 最初は、ビシュハにしようかと思ったけどダサいし、ビシュトと紛らわしいからやめた。

 正直、あまりネーミングセンスには自信がないんだよ、これで許してくれ。


「オッケー。そんじゃ、今から何個か質問するから、ジェントが答えられる範囲でいいから答えてくれ」


『わかりました』

 

「まず、一つ目。主神の加護は具体的にどんな効果があるんだ?」


『主神の加護は、庇護者に対して基礎身体能力に対する補正を付与します。

 その他にも、スキルの熟練度補正や魔属性に対する特効などがあります』


「なるほど、基本的なバフが常時ついてるみたいなもんか」


 効果自体は地味だが、重宝しそうな加護だな。

 あとは、この加護をどれぐらいの人数が受けているかだけど………


「念のためだ、あまり公に出すことは控えるか」


 自分の能力はそう言いふらすもんじゃないしな。


「次は、称号なんだが……これ、なんか効果あるのか?」

 

 称号に関する能力に補正とか付いたりとかは……


『特にありません』


 ですよねー。少し期待してしまった俺が馬鹿だったよ。

 まあ、暇なときに称号集めでもしてみるのはいいかもな。


「じゃあ、次からはステータスには載せなくていいよ」

 

『了解しました』


「そんで、これ!能力と表示されている部分と潜在と表示されている部分。ここの説明を頼む」


 俺が、このステータスの中で一番気になっている部分であり、最も謎な部分だ。

 多分、スキルとかが表示される欄なのだろうが、俺は全てがなしと表示されている。悲しい……。


『それでは、まず初めにスキルの等級について説明いたします。』


「はい、お願いします」


『スキルの等級が低い順に、コモンスキル・レアスキル・ユニークスキルとなっています。

 コモンスキルは、ある程度の鍛錬を積めば誰でも得ることができるスキルです』

 

『レアスキルは、コモンスキルを極めることでスキルが進化し、獲得することができます。

 しかし、コモンスキルを進化させるには、膨大な努力と時間そして才能が必要となります。

 ほとんどの人が、この工程で挫折しますね』

 

 『そして、ユニークスキルです。

 ユニークスキルは、神により選ばれた人間のみが有することができるスキルです。

 さらに、レアスキルとユニークスキルの間には大きな壁が存在します。

 後天的にユニークスキルを獲得することは、ほぼ不可能と言っていいでしょう。

 そして、過去に発見されているユニークスキルは4つのみです。

 ここまでは、よろしいでしょうか?』


「はい、大丈夫です。続けてください」


(ここまで、丁寧に教えてくれるのか。

 もう、先生だろ。

 うん、これからは先生と呼ばせてもらおう)


(なぜ、先ほどから敬語に?)

 

 ジェントは、そんな疑問を抱きながらも説明を続ける。


『ここからは、本題の能力欄と潜在欄の説明です。

 能力欄は、獲得しているスキルや技などが表記されます。

 そして、潜在欄にはその人の獲得できる可能性があるスキルや、

 才能があるスキルが表記されます。

 しかし、忘れてはいけないのが、あくまでも獲得できるでしかないことです』


「なるほど、潜在欄のスキルが絶対に獲得できるわけではないと」


『はい、スキルによっては条件をクリアしないと獲得できないものもあります。

 例えば、ユニークスキル【剣聖】などは、コモンスキル【剣術】と【聖属性】を進化させたレアスキル【聖剣術】の熟練度をマックスにし、更にオリジナル技を一つ作成することでようやく獲得できます」


 おぉー。なかなかにハードな獲得条件だな。

 でも、その分、強力なスキルなわけだな。


「はい!先生、質問いいですか?」


『はい、どうぞ』


「先ほど先生は、【剣術】と【聖属性】を進化させると説明しましたが、どのようにしてコモンスキル2つを進化させるのですか?」


 これは、今の説明を聞いて引っ掛かりを覚えた部分だ。

 最初の説明では、コモンスキルを極めることでそのスキルが進化すると言っていたが、2つのスキルを合成して進化するとは言っていなかった。


『はい、ユニークスキルの獲得可能性がある方には、必ずスキルの操作権限がある、我々"神の代行者"が派遣されます』


「あぁ、なるほど。それなら納得ですね」


『あとは、スキルの権能などについての説明なのですが………』


 そう、先生が言った瞬間、タイミングを見計らったかのように俺の腹がなった。


『まずは、朝食にしましょうか』


「はい、そうですね」


 そうして、俺の紳士的ジェントルマンなジェントとの授業は一旦、朝食後にお預けとなった。


 

 

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