第5話
ジャニクなんて、石じゃない石生物を遠くに放り投げて遊んでいたからその石で彼を殴打したのは昔の話だ。
動かないのに動かしやがってと、その石生物を手荒く扱うリーシャに「その生物史上今が一番動いていますよ」と告げたのはアルメイ。
まあフルスイングだったもんな。
でも欠けもしなかった。
流石はうちの星に住んでるナニカである。
おっと、ジャニクの質問にまだ応えられてなかった。
「そりゃもう数え切れない程あるよ。地球では90年以上存在してるから。アニメも長い間放映されてて、今もされてると思う」
自分がこちらに来てからどれ程経過しているか分からないから。
地球はどうやらアポカリプスとか世紀末になってなかったらしく、聞いたら西暦的に私が居なくなった少し後って年代だった。
「どんな道具があったかな……音楽を流したりしてくれる道具とか?」
「お!ノラえもんの主題歌だよな!俺でも覚えてる」
と、歌おうとしたが止める。
歌も鼻歌があるので再現出来たけど例に漏れず大統領がガチファンのせいで国家の歌にしかけたというエピソードが浮かぶ。
なんで私は大統領に対して止める作業をしていたのかと想いを馳せる。
国歌にはさせなかったが、大統領の放送【今日の大統領】という星全土に放送されている大統領のコンテンツにて、良く歌われている。
うちの星、ゼクシィには歌とか音楽とか活発じゃない。
音楽を作っても楽しむという感覚があまりない。
生活音にするくらい。
そこにノラえもんの主題歌のあのポップなそれは、爆発的に広まる。
小説を読む時は流すというわけだ。
大統領チャンネルも読み聞かせがある。
皆良く飽きないよね。
他にもノラえもん以外のものも書いては居るが、ライトユーザーの私に書けるのは浅い部分だけ。
2人や家族に手伝ってもらうが、元を知らないので焼け石に水となった。
地球でも音楽の役割の初めは楽しむものではなく祈りなどの方法の過程において、捧げられた。
やがて、音楽は人が引くもの。
聞く人が現れてお互いに披露していく。
今の惑星はそこで停滞していた。
アニメソングで急に音楽を楽しむだけではなくBGMとなり演出に加えるという手法にみんながハマっている状態なのだろう。
ジャニクの歌を止めたのは歌うと周りの人達がどこからともなく現れて皆で大合唱しはじめるので、止めた。
「やめてくださいジャニク。準備が進まなくなります」
アルメイに言われて彼はそうだな、と照れた。
「なあ、他の歌も教えてくれよ」
「シブリの歌でいい?」
「シブリ系よりも激しさのあるやつがいい。携帯獣!」
「携帯獣は……シーズンによって変わるからなあ」
「私は静かなものが好きですからシブリでお願いします」
魔女の宅配便を歌う。
鼻歌だ。
私はライトユーザー故にうろ覚えザムライだから。
携帯獣ことポゲモンは1997年に放映。
携帯獣同士を戦わせるゲームを元にして創られた。
今現在もおそらく続いている。
元のオリジナル作品としての魔女の宅配便は1982年から1983年にかけて連載された。
シリーズ化されており、とある監督によって1989年にアニメ映画化版が制作された。
シブリ作品として代表作となるくらい知名度が高い。
因みに、こういう歌とか主題歌とかは家族と幼馴染だけに留めている。
なぜなら、地球に行けば本物を聞けるようになるから。
それなのになんっちゃってな歌も認知されていたら私は居た堪れなくなる。
「思ったんだけど、アニメを持ってくる為にレンタルなり買うなりしたいんだけど、地球へのお土産なににする?」
前も課題にしたものの、いまだ決められていない。
「ゼクシィの科学力は随一なのでそれを渡せば良いのではと推奨します」
「駄目なんだよ。SFものの科学の技術提供はまじでアポカリプスを招くかもしれないんだよ。SFもののお決まりなんだよね。私が引き金になりたくない」
「科学力が無理なら俺らの主食だよな」
「地球の皆にうちの星のご飯がアレなの知ってもらうのは確かに今後の説得力になるよね」
お土産にはなるけど誰も食べないっていうか、食べられないんじゃないかな。
くるみ一つ美味しい地球じゃゲテモノ扱いされるだろう。
「もっと有益な」
「私達と友好を結べるだけでも十分なのに、それ以上渡すのはやめた方が良いです」
「ううーん。それはそれでイメージ悪い」
「地球人に夢見すぎてる気がするぞ。会ってもねえのに」
「そこはホラ、かけるしかない」
「友好的にこっちがしてれば良いだろ」
「ゼクシィ無敵だから分かるは分かるけど」
「大統領が私達のボディガードになるって、ちゃっかり便乗して地球に行くときについてこようとしてくるくらいには無敵ですよ」
「ぐっは!やめて、やめて、思い出させないでっ」
あの時は大統領の大統領になる時に勤務契約上、強制的に付随してくるボディガード達の前で「君達のボディガードになっても良いんだよ」とイケメン声で提案していた光景を私はそんなルートあってたまるかと、ノーを突きつけた。
確か大統領って歴代最強かもしれないと言われていたな。
地球に対して過剰なボディガードであろう。
大統領に私の直筆サインつきの手紙を送った。
知っているとは思いますが私達3人は遂に地球へ行きますと教える為だ。
大統領はどこかの聖徳な大使みたいに同時進行可能なのですでに詳細を知っているだろう。
あと、アルメイ情報によると大統領は分身も作れるらしい。
うちの大統領1人勇者パーティとかしてるのかな?
万能過ぎる。
直ぐに大統領から直接メールが来た。
即レスにも程がある。
女友達よりも早い。
『全て聞き及んでいるよ。地球へのお土産はメールに添付しているので良ければ使ってくれ』
気の良い親戚のオジサン感が凄くする。
「大統領から添付されてきた。地球のお土産にしなさいって」
「大統領相変わらず耳が早い」
「あの人、天才ですから」
3人で見ているとプレゼントされた中身を見る。
「は?」
「タネ?」
「この濃度。まさか、世界樹」
コロンッと手のひらに豆みたいなのが転がり驚くと、アルメイはしげしげと見る
「せ、世界樹!?いや、急にSFにファンタジー要素来ないでいいよ」
「ファンタジーとはなにかまだ分かりませんが、短略に言えば洗浄を目的としたろ過植物です」
「科学を極めたら魔法ってホントだなー。ところでどこに植えるの?」
「地球について調べました。候補は太陽系です。または火星か木星です」
「地上にあると争いの元になるかもしれないよね」
「なるのか?ただのろ過植物だろ。敏感というか、臆病なのか?ヒト科って」
「ウチの常識は他の常識じゃないからねえ。そこは頑張って理解しようとしてあげようか」
慣れたけど、私でもビクつく事態だ。
「科学に及び腰となると、このタネはまだ時期尚早ですね。別のものが良いです」
「うん。じゃあ、えっと、最初に降り出しかぁ」
「もうご飯で良くね?それか……コイツ!」
ワシっとわしずかんで引き上げた手には謎生物と多分スライム。
「解剖されるから可哀想でしょ!」
「解剖されるような軟さはないぞ?」
「えっ?ため、したの?」
愛銃エピロールカノンちゃんを構える。
私の可愛がってるスライムを刻んだとでも一言口にしたのなら、私のこれが撃たれる。
まあ、大統領のボディガード見習いに勧誘されるくらい将来性のある身体能力を持つジャニクなら、避けられるだろう。
「あぶねーよ!してない!してないって!」
パパッと手を離して逃がしたので愛銃を下げる。
謎生物の可愛さを知る私は謎生物同好会を設立していた。
会員は私だけ。
いくら幼馴染でも入りたくないと言われたので架空同好会『謎生物非同好会』にジャニクを認定している。
きゃつは謎生物を弄ぶ時があるから目を光らせておかねば。
やつの頬をスライムでべちんべちんと打つ練習をスライムとしていることは機密だ。
目撃したらしきアルメイは「スライム史上一番動かされていますよ」と呟いたとか。
「お土産、どうしよっか……食べ物は知ってもらうために持っていくけど」
「ノラえもん全巻は?大統領の本棚ならタダだぞ」
「それ窃盗っていうやつだよ??」
「お前の全巻でもいいぜ」
「向こうの人達読めないから」
「ゼクシィの分析により地球語は既に解析されてますから地球の言葉に変換をさせれば良いです」
「や、いやっっっ、バレル!色々!」
公式に二次創作を送るって一番やっちゃいけないやつ!
やめよう、と必死に止めた。
「危ない危ない。あ!無害だからうちのいい香りの石鹸とかシャンプーとか」
「ノラえもん風味の石鹸あるぞ?」
「あ、結構です」
私向こうの人達に断罪されないよね?
「というか風味ってなに?何味なの?美味しいの?チョコレートじゃないんだから」
「ノラえもんをイメージした香り」
「私もお風呂セット持ってます」
グッズ会社が逞しい。
社長私らしいけど丸投げしてるよ。
ということは、自宅にあるか、親が既に使用しているか。
下手したら家宝扱いか。
「よし、せっけんとかシャンプーで良いや」
食べ物を渡されても困らせるだけかもしれないが、美味しいのを食べたい気持ちを全力で伝えるには必要な手順。
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