第一話 恋人

第1話

夕方の18時になると、和田バレエ団の研修生たちが、教室にやってくる




真穂まほ先生、おはようございます」




「おはよう」




「ねぇねぇ、先生、今年の夏の公演、何をやるか決まった?」




「うーん、じゃあ、みんな揃ったら発表しようかな。配役も」





生徒のサユキとユカは、「ヤバいそれ!」、といいながら、嬉しそうに更衣室に入っていった





その背中を昔の自分に重ねて、微笑んだ





私は和田バレエ団で小さい時からバレエを習い





高校一年生で海外に留学した





今は現役を退き、後進の指導をしている





担当しているのは研究生Aクラス、団の中で最もハイレベルなクラスだ





なかなか生徒たちの指導も楽しい





もう、踊らないと決めたから





これで良いと思っていた......










そんなことを考えていたら、ある生徒が入ってきた





「カリンちゃん!おはよう」




「おはようございます」





素っ気ない態度で、更衣室に入っていくカリンの背中を私は見つめた





カリンはこのクラス、いや、うちの団で一番の実力を持つ

女の子だ





海外での活躍も期待されている






なんとなく、私には懐かないのだ

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