第10話 あれからの成果
仲直りをしてから早くも2週間が経った。
あの日に翌日から、俺と木滝さんの文化祭に向けての練習を再開したが、素人の俺でもわかる程に良くなっていた。
木滝さんは一人の時も練習しているらしく、その時もたまにトラウマが出てくるらしかったが、今ではそれが嘘のようになっているらしい。
そして、俺が木滝さんの演奏を見ている時でも変化はあった。呼び出された土曜日の時ではトラウマで弾けなかったところも、今は問題なく弾けていて、あともう少しのところまで弾けるようになっていっている。
ただ、問題はあるにはある━━━━━
「木滝さん」
「?何か変なところあった?」
「いや、そういうことじゃないんだけど、ちょっと練習の仕方で話があるんだけど.....」
......なんかダメだしする感が強くなっちゃった気がする......
「なに?言ってみて?怒らないから」
笑顔でそう言う木滝さんの顔には若干恐怖を感じる.....
やはり言い方変えるべきだったぁぁぁ。
「あの〜、ダメだし.....じゃないんですけど......」
「うん、ほら?言ってみて?怒らないから」
既に怖い。だが、言ってしまったことだし気になることだ。言うしかない。
「そのさ、木滝さんを見る人の数、俺一人だけじゃ足りないと思ってさ」
俺が思っている練習の仕方というのは、木滝さんを注目する人の人数の問題だ。
木滝さんがいいと言えばいいのだが、文化祭当日は日によっては来校者の数がだいぶ違う。
一日目では、在校生、その保護者、そして卒業生だけだ。だが、二日目になると、そこに一般の人が含まれるのだ。
一日目だろうが二日目だろうが、人は来る時は来る。そう考えると、俺一人の視線だけで練習になるかが不安だった。
「そっかぁ......そうだよね、真波くんだけじゃさすがに足りないか」
少しの間、何か考えた木滝さんが口を開く。
「じゃあさ! 優香ちゃんと八葉矢くんも呼んでみる?」
「それがいいんじゃない?」
「優香ちゃんと八葉矢くん、くっつけ大作戦!」
うん、この人はこの人で何か企んでたわ。
□
俺と木滝さんは、少し暗くなった廊下を歩いている。どうやら運動部も終わった頃らしく外からの声や音は聞こえない。
ただ、俺と木滝さんの足音だけが、廊下に響いている。
「ねぇ、真波くん」
少しだけ、何か言いたげな顔をして俺の方を見る。
「何か気になることある?」
「......」
少しの沈黙の後、木滝さんは━━━━━
「ううん、やっぱりなんでもない!」
━━━━━「じゃあね」と笑顔で言って、木滝さんは走り去ってしまった。
......なんでもないの内容が、めっちゃ気になるんですけど?
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