第9話 もう一度
「「......」」
気まずい......
何から話せばいいのか分からない。いきなり月曜日の放課後の件を聞くとしても、それのせいでさらに空気が重くなりそうだ。
「......ごめん」
木滝さんは沈黙の中、そうつぶやいた。
月曜日の件だろうか? にしてはなんかすごい罪悪感を背負っている感じに見えるが......
「いや、別に大丈夫だよ。風邪は引いたけど元気ではあったし」
俺がそう軽く答えると━━━━
「違う!!!」
木滝さんがこんなにも大きな声を出すことなど思いもしなかった。
「全部......私が悪いの......」
一つ......二つと頬から流れ出ている涙。
木滝さんが罪悪感と苦しみに悩まされていることが、その涙を見ればすぐにわかった。ただ、俺は何が「違う」のかが分からなかった。
「そんなに思い詰めなくても大丈夫だよ。別に死ぬんじゃないし」
「......私......聞いたの......優香ちゃんと......真波くんが......話してるところ......」
おそらく月曜日の昼休みの時間のことだろう。
ただ、それがどうしてこんなにも木滝さんを苦しめているのか? その答えはすぐにわかった。
「真波くんと優香ちゃん......付き合ったんでしょ......? それじゃあ......私、ただの邪魔者じゃん......優香ちゃんと......真波くんの時間を......奪ってる、ただの......邪魔者......」
(......これ、勘違いされてない......?)
「あのぉ......? 木滝さん?」
「わかってる......私はもう一人で頑張るから......」
「......」
その一言は、俺の心に強く刺さった。
なぜだか分からない。けど、その選択だけは絶対にさせたくない。そうさせたら、木滝さんはもっと辛い思いをする。こんなにいい人を、俺のせいでこれ以上苦しめさせるのさせたくない!
「ごめん、木滝さん。」
「......なんで謝るの......?」
「俺は、木滝さんのこと......あんまり考えてなかったのかもなって、今思った。俺のせいでで、こんなにも辛い思いをしてたなんて知らなかったし、思いもしなかった。」
「違う、それは私の勘違いの━━━━━」
「違うよ、勘違いさせた原因は結局は俺なんだ。元々辛い思いをしていたのに、わざととかじゃなくても、もっと辛い思いをさせた。」
(そう、俺がもっと木滝さんのことを知っていたら.....あの時、少しでも違和感に気づけたら.....)
「もうそんなことはさせない! そんなことは言えないけど......一人で全部背負わせたくない......だから、まだ、一緒に頑張って欲しい!」
気づいたら、俺も涙を流していた。
きっと、これは決意の涙なんだろう......「もう一人で背負わせない」.......そういう決意がこもっている......
「......いいの?」
木滝さんはそう質問するが、俺の答えは変わらない。
その日、俺たちはもう一度一緒に頑張ることを決めた。
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