第6話 八葉矢は女子に好かれてしまう2
(龍希のやつ、木滝さんに変なこと言わねぇよな......?)
若干そういう不安もある中、グループワークが始まった。
グループワークと言っても、ただ班に問題が分け与えられそれを解くだけのシンプルな活動だ。
着々と問題を解いている俺たち。
ただ、少しこのグループ......いや、間宮さんと龍希について気になることがある。
「八葉矢、ここどう解くっけ?」
「ん?あぁ、それも俺無理、海斗に教えて貰ってくれ」
「......」
......龍希よ、それ今何回目だ......?
そう、間宮さんはよく龍希に問題解き方を聞き、聞かれた龍希は即俺に問題を丸投げする、それを繰り返しているのだ。(しかも俺に丸投げされたら間宮さんは自力で解いていく)
一方、龍希が好きなはずの木滝さんは、集中しているのか、1人で解いている。
もしかして今朝、龍希は木滝さんではなく、間宮さんのことを言っていたのではないか? そう疑いたくなる。
そんなことを思っていた時、床に一枚の紙切れが落ちてきたことに気づいた。
位置的に間宮さんのいる席からだろう。
俺はその紙切れを拾って間宮さんに渡そうとするが、その紙切れに何か小さい文字が書いてあることに気づいた。
「真波、昼休みに私のとこ来て」
俺は間宮さんの方を見るが、何も反応は無い。
最悪な突然の呼び出し編(part2)が今、始まろうとしていた━━━━━
□
昼休みになった。
本来ならここで、龍希と一緒に飯を食うのだが、その龍希は四限の時に熱を出して早退したので、間宮さんに会いに行くのはそう難しくはなかった。
「来たね? じゃあ、ここじゃちょっと話すのやだから別のとこ行こ」
そう言って足早に教室を出ていった。
今にでも逃げ出したいが、そうしたら後々面倒なのでついて行くことにした。
□
場所は屋上。
屋上で、しかも青春真っ只中の高校生男女二人と言ったら告白を思い浮かべる人は多いだろう。ただ、あの態度でそんなはずもない。
少しの沈黙の後、先に口を開いたのは間宮さんだった。
「真波、お願いがある」
「何となくわかるけど......龍希のこと?」
沈黙の中、間宮さんの顔がだんだんと赤くなっていく。
「わかりやすい......」
「何か悪い......?」
「調子に乗りました、すみません」
思ってしまった余計な一言がつい口から出てしまった。
だがまぁ、本当にわかりやすいのだ。
「私が、八葉矢のこと好きなの、わかるでしょ?」
「まぁ、わかりやすいかったし......」
「ならまぁ、そういうことだ......」
今の間宮さんを見ればわかる。
彼女の龍希に対する気持ちは本物だということに......
ただ、間宮さんが好きになった相手は、恋愛には興味が0に等しいほどの龍希だ。
彼女には悪いが、正直諦めてもらうしかない。
「間宮さん、厳しいことを言うけど、多分龍希はOKするとは思わないと思う」
「だよねぇ......何となくわかるよ、雰囲気でわかるというかなんと言うか......」
間宮さんもそのことは何となく察していたようだ。ただ、それでも彼女は━━━━━
「でも真波、次の一歩を踏み出せるようにするために、告白してバッサリ断られる、そうなるまでは少しでもいい! 協力して欲しい!」
次の一歩を踏み出すために......か......
俺にはまだ出来ていないことだ。
「あの日の事故」からまだ一歩も踏み出せていない。
......でも、俺も一歩を踏み出したい。
だから、俺の彼女への返事は━━━━━
「わかった、間宮さんが龍希にバッサリ切り捨てられるまで、できる限りのことはするよ」
━━━━━それが俺の、彼女への返事だ。
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